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コンビニへ行こう! 後編

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「ちゃんと拭かないと風邪引きますよ?」
そして、そのまま臨也の頭をがしがしと……


ドオン!


「っえ!?」
「うわっ、何!?」
瞬間、ものすごい音がした。
まるで空間をたたき割るかのような巨大な音だ。慌てて立ち上がった臨也の横で帝人が外を見つめ、ぼそりと「雷」とつぶやいた、その時。
ふっ、と店内の電気が消える。
「え!?」
停電だ、と理解する間もない。真っ暗になった店内を、光が駆け抜けて一瞬照らす。そして、続けてまた大きな雷の音が響いた。
「い、臨也さん!」
その音に、帝人が思わずとなりの臨也のシャツを掴んだ。
「だ、大丈夫!ただの停電だから、すぐ回復するよ!」
慌てて、掴まれた手の上から自分の手を重ねれば、帝人は少し震えている。はっとして暗がりの中の帝人の顔を見つめたなら、こちらを見ていた目とばちりとかち合った。
大きな、吸い込まれそうなその色。
臨也は彼を天使と言ったが、それについて他に表現する単語を見つけることができない。甘そうでふわふわしていて、可愛らしい、それだけではなく、帝人には一本筋の通ったまっすぐなところが合って、そのすべてのバランスに心がぐいぐいと惹かれる。
ただこうして、視線を合わせただけで。
そのまっすぐな視線に、心のすべてを持っていかれるような気が、した。
「っあ、の」
「……うん」
「店のドア、自動ドアだから、停電だと、あかなくて」
「ああ、そういえば、そうか」
「っだから、ちょっとだけ」
じわりと、その瞳に涙がたまるのを、まるでこの世で一番美しいものであるかのように見ていた。宝石のようなその輝きに心奪われる臨也にすがって、帝人が震える声を搾り出す。


「ちょっとだけ、あの、抱きついてもいいですか……?」


大 歓 迎 だ 。
と勢い込んで答えなかっただけ褒めてくれ。
いくら空気を読めないと言われても、ここで読めなかったら恋愛する資格もない。臨也は大きく息を吸って、吐いて、ドキドキとうるさく高鳴る胸に、帝人の震える体をだきよせた。一回り小さな背中に手を回して、ぎゅっと力を込めたなら、帝人もそれに答えるように臨也の背中に手を回し、首もとで安堵の息を吐く。
や、柔らかい……!
誰が思うだろうか、高校生男子の体がやわらかいだなんて。だが事実として柔らかいのだから仕方があるまい。
さっきからなんでこんな一気に話が進んでいるのかよくわからないが、とにかく何かフラグの神様が臨也の恋を後押ししていることだけは理解できた。暗闇の店内で抱き合う二人。なんて素晴らしい状況なんだ。
生きててよかった!
停電万歳!
台風もっとやれ!
喝采の吹き荒れる臨也の心をしってか知らずか、ぎゅっと抱きついてくる帝人がもごもごと言う事には。
「っその、こういうの、苦手なんです、僕、あの」
いつになくどもっているその口調に、さっきから臨也の胸はきゅんきゅんと音を立てっぱなしで五月蝿い。
「い、いやうん、得意な人はいないと思うよ、うん、停電だし!」
「ご、ごめんなさい」
苦手なものなんて無さそうな顔で、いつも何が起きても淡々と対応する帝人がこんなふうに臨也を頼る日が来るだなんて、想像さえしていなかった。臨也がもう一度腕の中の体温を確認し、帝人のつむじを見下ろす。薄暗い店内とはいえ、外ではひっきりなしに雷が光っているので、ぴくりと小さく震える帝人の様子も手に取るようによく見えた。
つむじ、可愛い。
もはや外の暴風の音も、雨音さえも臨也の耳には入らない。あまりのシュチュエーションに思考回路もショート寸前。
するりと伸ばした指先が、帝人の髪に触れ、それに驚いたのかぱっと帝人が顔を上げた。
あ。
今。


キス、できるかも。


そんな思いがよぎったのは、距離が近かったからなのか。
臨也はただ、何も考えられずに欲求に素直に従おうとした。
「臨也さん?」
不思議そうに首を傾げる帝人の頬に、手のひらを添えて。どうしたのかと見上げる目の、問いかけには答えず、ただ、その唇に息を吹きかける。
帝人のまつ毛がふるりと震えて、何か言いかけたその表情を、とても間近で見ていた。
「帝人、君」
キスしても、いいかな?
そう問いかけかけた言葉は、しかし。


じゃかじゃーん!


と暗闇に盛大に響き渡った電子音に、あえなくお蔵入りとなるのであった。
「っ、携帯!」



作品名:コンビニへ行こう! 後編 作家名:夏野