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FATE×Dies Irae 1話-4

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 鼓膜をつんざく激突音。撒き散らされた衝撃波が校庭を荒々しく席巻する。
「ちっ……!」
 アーチャーの横顔に色濃い焦りがよぎる。
 投擲武器および飛び道具に対して無敵の防御力を誇るはずの概念武装は、しかし瞬く間に花弁をむしられ、残すところは後一枚。
(持ちこたえてくれ……!)
 砕けんばかりに歯を食いしばり、渾身の魔力を注ぎ込む。
 最後の七枚目がついに崩壊の兆しを見せ始めたところで、黄金の輝きは消失した。
「お見事。よもや神槍の一撃を防がれるとは、おみそれいたしました」
「それはこちらの台詞だ。ロー・アイアスをこうも易々と食い破るとは」
パチパチと気易い調子で拍手を送る神父に対し、アーチャーは余波によってズタズタに引き裂かれた片腕を垂れ下げながら、険しい表情を滲ませる。
(冗談ではない……!)
 ロー・アイアスはアーチャーが複製できるものの中でも、最高の防御力を誇る盾だ。
 それをここまで深く突き崩すとは並み大抵の宝具にできることではない。
「アーチャー!」
 襤褸雑巾と化したアーチャーの腕を目にし、蒼染める凛。
「騒ぐな凛。大事ない」
 腕に走る激痛をこらえながら、平静を装い応じるアーチャー。
(まずいな……!)
 この身は剣製に特化した魔術回路。本来であれば盾の複製など埒外であり、それゆえ続けて何度も複製できるものではない。
 今一度あの槍を抜かれては、もはや防ぐ手立てはない。
 だが――
「さて、今日はここまでですね」
ランサーはそう言うと、あっさり身を翻した。
「どういうつもりだ?」
 怪訝に眉をしかめるアーチャー。
 神父はまるで悪戯を告白するように子どもっぽく微笑み、
「いえ、実を言えば日に何度もあの槍を抜くのは骨でしてね。それに宝具を防がれたのであればさっさと帰ってこいと、マスターからの命令です。くわえて、他にやらねばならぬこともできましたので、これ以上あなたがたにかかずらわっている余裕は無いのですよ。は、今宵はこれにて失礼します」
 それだけを言い残し、悠然とその場を立ち去るランサー。
 歩み去っていくその背中を、アーチャーと凛はただ見送ることしかできなかった。
「これが黒円卓。聖槍十三騎士団の力だって言うの……!」
 悔しさに打ち震える凛の呟きは、静寂を取り戻した校庭に虚しく溶けた。


「――やれやれ、こりゃ本当に当たりみたいだな」

作品名:FATE×Dies Irae 1話-4 作家名:真砂