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DDFFパラレル(IF):ルゴルの酒

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この世界へとやって来た皆をあちこち案内して回っていて、たどり着いたのはルゴルの村だった。
「うわあ、可愛い!」
可愛いものに目がないティナが真っ先に見つけたのは、のんびりと草をはんでいる羊。
「触ってもいいかなぁ」
キラキラと眼を輝かせて訴えてくる彼女に「駄目」と言える者はいないだろう。
「いいんじゃないか……な」
と言葉を言い終わる前に、ティナは羊の方へと駆け寄っていた。
「ふかふか……」
ティナが羊の体を撫でると、羊は「メェエエエー」と気持ち良さそうな声を上げる。
「ここの羊は穏やかだからいいよなぁ……」
そういえばイストリーの羊には思いっきり蹴り飛ばされたっけ、と懐かしく思いだしていると。
「……もしかして体当たりされたとか?」
相変わらず妙に聡いジタンが、探りを入れるように問いかけて来た。
「ん、蹴られた」
別に隠す事でもないのでそう答えると、彼は何故かがっくりと項垂れた。
「やっぱりそういう行動するのな……」
「何だよ、やっぱりって?」
「まぁ、まぁ」
いいタイミングでセシルが間に割って入って来た。
「今日はこの村で一泊だよね。あれが宿?」
彼が指さした方向にはこの村唯一の宿がある。
――決して大きくはないが、観光客もそう滅多に来ないこの村に宿があるって事自体奇跡かも。
「皆は好きなところ見回ってきていいぞ。……といってもそんなに見て回るところがあるほど大きな村でもないけどさ」
「んじゃオレ、武器屋行ってくるッス!」
「あ、ティーダ。待てよ!」
さっそく武器屋へと走っていくティーダをフリオニールが追いかける。この図式は何処にいっても変わらない――というか、フリオニールもよくあそこまで面倒見るもんだと感心する。
見れば三々五々皆自分の思うことをし始めていた。
オニオンナイトは羊をフカフカしているティナの元に向かい、セシルとクラウドは先ほどティーダが向かった武器屋へと向かって歩き出している。
「バッツはどうするんだ」
スコールに問われおれは顎で宿の方を示してみせた。
「宿とっとかないといけないだろ? 十人の大所帯なんだから」
レナやファリス、クルルも来たがってたのは分かってたけど、ルゴルに行くんだと伝えたらあっさりとおれ達だけで行くことを了承してくれた。
あまり大人数で押しかけると迷惑かけるのが分かってたからだろう。
それに――ルゴルは……
「……おまえはどうするんだ」
次にスコールが問いかけたのは――ただ一人立ち尽くして辺りを見つめている光の戦士、だった。
結局彼の記憶は、元の世界に戻ってきても戻らなかった。
――もしかしたら何か思い出しているのかもしれないけど、おれ達には教えてくれない。
だからといって、彼がおれ達を拒絶している訳でも軽んじてる訳でもないのは、おれにも分かっている。おれが皆に言えない記憶を持っているのと同じように、彼もまた誰にも言えない大切な記憶がある、ただそれだけ。
だからおれ達は今まで通り、自分が思うように勝手な呼び名をつけて呼んでいた。
「おーいリーダー。何か気になることあるか?」
呼びかけると、彼は我に返ったようにおれの方へと視線を向けた。
「……いや……そういう訳では」
「好きなところに行ってきて構わないぞ」
「……ああ……」
何か歯切れが悪い。いつもハキハキとしている彼にしては珍しいな?
「何処に行ったらいいか分からないなら、オレが連れてってやろっか?」
ジタンの言葉にスコールがすかさず「おまえが行くのは酒場だろう」とツッコミを入れた。
「酒場だけじゃないって」
「あ、そういえば武防具の店に可愛い売り子がいたなあ」
リボンをくれた女の子の姿を思い出しつつそう言うと、ジタンの目が輝いた。
「よし、その店から行ってみるか」
「ジタン……」
彼も相変わらずだ、と苦笑が浮かぶ。
「スコール、一緒に行ってくれるか?」
「……仕方ないな」
光の戦士を伴って早速武器屋の方へと歩き出しているジタンを、スコールが追っていく。
皆の後ろ姿を見送って、おれは宿の方へと歩き出した。






ここまで飛空艇でひとっ飛びとはいえ、やはり自分の世界とは違うところに来て色々疲れたんだろう。
宿に落ち着くと皆すぐに眠りについてしまった。
(この辺りの散策はまた明日だな)
おれは、というと。
久しぶりに来たからか何だか眠れず、暫くベッドで悶々としていた。
結局寝る事は諦めて身を起こす。
(――前にも……こんな事が、あったな……)
あの時も眠れなかった。体は疲れていたはずなんだけど、妙に気持ちが高ぶっていていつまでも眠れなくて、何か酒でも飲んだら眠れるかと思って酒場に向かったんだった。
そんな事を思いだしながら宿の外へと出る。
「!」
思いもかけない人影を見つけて、おれは足を止めた。
「……リーダー? どうしたんだ、一体」
光の戦士の彼が宿の壁にもたれるように立っている。どうやら空を眺めていたようだった。
「……ああ、君か。いや、眠れなくてな……」
さすがに身にまとっていた鎧は全て外した姿だが、それでも剣だけはしっかりと腰に下げているあたり、何処にいても彼は彼なんだなぁと思う。
「おれも眠れないんだ。良かったら付き合わないか?」
「付き合う……?」
向こうにある酒場の方を指さしてみせる。
「良いもの、飲ませてやるよ」
「?」
彼は不思議そうな顔をしつつも、おれが歩き出すと素直に後ろについて歩き出した。





酒場のカウンターに座り、彼に隣に座るよう進める。
「こっち」
「……ああ」
こういう酒場に来たことがないのか、はたまた記憶を無くしてしまっているのか、いつもの凛々しい態度は何処へやら。
彼はおずおずとおれに言われるまま椅子へと座り、落ち着き無く辺りを視線だけで見回している。
「オヤジ、ルゴルの酒を」
「へい」
それから彼を見ると、今度は彼はおれを見つめていた。
「どうした?」
「そうか……君はもう成人していたんだったか」
おいおい、幾らおれが色んな事やらかしてるからってそれはないだろう……。
「ひっどいなぁそれ」
「すまない……ジタンやスコールと話をしているところを見ると、つい同じような歳に見えてしまって」
そんな会話をしていると、すっと目の前にグラスが差し出された。
おれの分と、彼の分。
「……これは、私の分か?」
「そ。記憶は無くっても見た目二十歳は超えてるだろ、あんたも。ぐいーっと飲んじゃえ」
言いつつ自分の前に置かれたグラスを手にとり、一口飲む。
――久しぶりに飲む銘酒は喉にぴりぴりとした刺激を与えてくれる。
もう一口飲もうとした時。
「……ごほっ、こほっ」
隣で彼が咽せていた。
「お、おいおい大丈夫か?」
もしかして、おれの言葉を真に受けて本当にぐーっと一気に飲んじゃったとか?
「ルゴル酒はきつい酒だから、本当に一気に飲んだら咽せるのも当たり前だって!」
声をかけながら落ち着かせようと彼の背を撫でる。
「……だ、大丈夫だ。ありがとう……」
ようやく落ち着いた彼がはぁ、と大きく息をつく。
「これが、酒というものか?」
――そういう問いをこの場でされるとは思わなかった。
「もしかして……飲んだことない?」
素直に頷く彼におれは苦笑しか浮かばなかった。