Shall we dance ?
ギルが帰って行く。
その動きはぎくしゃくしていて、おかしい。
エリザは頬をゆるませた。
そして。
「ギル!」
名を呼んだ。
ギルは立ち止まった。
けれども、振り返らない。今の自分の顔を見られるのが恥ずかしいのだろうか。
エリザはギルの背中に向かって明るい声で言う。
「またね!」
すると、ギルは振り返らないまま、左手を顔の横へとあげた。
その手を軽く左右に振る。
それから、また、歩きだした。
エリザはギルのうしろ姿を見送る。
しばらくして、ギルは馬車に乗りこむまえにエリザのほうを向いた。
エリザはにっこりと笑いかける。
ギルは動きを止めた。だが、それはつかの間のことで、すぐにあせった様子になり、眼をそらし、馬車の乗りこんだ。
バイルシュミット家の馬車が去っていった。
エリザはくるりと身体の向きを変える。
そして、歩きだす。
薔薇の花咲く庭を進む。
さっきのことを思い出し、満ち足りた気分で、屋敷にもどった。
また、一緒に踊りましょう。
作品名:Shall we dance ? 作家名:hujio