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ガラスの靴

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 次の日の朝、王子様は国中に御触れを出しました。内容は、きっと皆さんもご存じでしょう。『このガラスの靴と足のサイズがぴったりな女性は、聡明たる第一王子と婚約することができる』というものです。文末が何やら意味深長ですが、左大臣や右大臣などの家臣たちや、王子様のお父さん、つまり王様との間に、うんぬんうぬうぬの何かがあったらしいです。
 さて、こうして王子様とガラスの靴の、シンデレラ探しが始まったのです。
 王子様とガラスの靴は、何人もの貴人の家を訪れ、何人もの娘に会いました。いずれもガラスの靴にぴったりの足を持つ娘はいませんでした。
 正午になり、王子様は左大臣がすすめた貴族の元を訪れました。そこで是非食事を、ということでした。王子様が食事をしている間、ガラスの靴は召使いと二人きりになりました。すると、召使いが何やら定規を持ち出して、ガラスの靴のサイズを事細かに測りだしたではありませんか。ガラスの靴はあまりにびっくりしたので、何も考えることができませんでした。
 午後から、またシンデレラ探しが始まります。ガラスの靴は何やら嫌な予感がしていました。そしてそれは的中しました。王子様が九人目の娘の元を訪れた時のことです。
「王子すぁま~ん、あの夜いらいですねぇー」
 ぴくぴく、と王子様の顔が引きつりました。彼女は舞踏会の夜、獲物を狙うハブのような目でずっと王子様を見ていた貴族の娘です。シンデレラを見た時の、マングースと会った時のような形相と言ったらありませんでした。王子様もこの娘のことはよく覚えていて、あの夜、共に踊った女性ではないことは明明白白でした。しかし決まりは決まりなので、王子様はガラスの靴を貴族の娘にはかせてみます。召使いの男はニコニコと笑顔で、サイズが合うのを疑っていないようでありました。貴族の娘も、いかにも得意げのようでありました。
 貴族の娘のつま先が、ガラスの靴に触れます。瞬間、ガラスの靴は、まずい、と感じたのです。なんとなんと、その娘の足のサイズは、シンデレラとそっくり同じだったのです。あの時召使いのしたことは、確実に貴族の娘を王子にあてがうための準備だったのです。
 ガラスの靴は慌てて、キュッと息を詰めました。
「あ、あれ?」
 貴族の娘の顔から、さーっ、と血の気が引きました。娘がいくら頑張ってガラスの靴をはこうとしても、ガラスの靴のサイズが小さくて入らなかったのでした。王子様は、ホッ、と胸をなでおろしていました。
 王子様が貴族の館を後にします。後ろから女性の、むきぃい! という声が聞こえてきました。
 この後、王子様はシンデレラの家を訪れ、シンデレラの継母と会い、意地悪な姉たちにガラスの靴をはかせます。当然、サイズは合いません。シンデレラの継母と意地悪な姉たちは、王子様とシンデレラを会わすことなく帰そうとします。しかしその時、王子様がつれていた、年老いたもう一人の召使いが王子様の隣に立って言ったのです。
「このお屋敷には、何やらもう一人、娘さんがおられるようですぞ」
 王子様はすぐに、そのもう一人の娘を呼ばせます。シンデレラが屋敷の奥からおずおずと出てくるのを見て、ようやくガラスの靴は肩の力を抜いたのでした。この後のことは、多く語る必要もないでしょう。めでたしめでたしです。
作品名:ガラスの靴 作家名:小豆龍