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【米英】Till death do us part

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 はっきりとした口調で断言すると、彼は驚いたようだった。ぼうっとした様子で名を呼ばれて、俺は熱に浮かされたようにその言葉をなぞっていた。
「死がふたりを分かつまで、変わらぬ愛を誓うよ」
『……』
 時が止まる。イギリスが息を詰めているのが伝わってきた。……そして、一瞬ののち聞こえてきたのは、彼の慌てたような声。
『……お前、なぁっ、』
「何だい?」
『び、びっくりするだろうが! 勝手に人を誓いの練習台にすんな!』
「……」
 あまりにあんまりな内容に、俺はその瞬間に何か云う気が失せた。黙っているとイギリスは勝手に説教を始めている。
『そういうのはちゃんと好きなやつに云えよ。ま、まぁ、今みたいに云えばいいんじゃねえか? お前にそんな相手がいたなんて知らなかったけどな。……俺の知ってる国か?』
 はあああ。お返しとばかり、今度は俺が息を漏らした。
「イギリス……」
『……な、何だよ』
 本当にこの人の鈍さはただごとじゃない。さらっと云ってみせたけど、結構恥ずかしいんだぞ! だけど、まだ肝心なことを云っていないんだから仕方ないのかな。そう思い、彼の名前を呼ぶ。けれど緊張した声色で返されて、またすぐに考えを改めた。
「……うん、やっぱりいいや。電話で云うことじゃないしね」
『え、』
「次に会ったときに話すことにするよ! じゃあね、おやすみ!」
『あっ、アメリカ? おい――』
 何が何だか分からない、と云った感じでイギリスが声を掛けたけれど、構わずに通話を切った。


「……もう、そろそろいいよね、イギリス」
 ツー、ツー、ツー。
 受話器を再び耳に当てる。音が変わっているのを確認してから、俺は携帯に向かって話し掛けた。
「ねぇイギリス、いったい何百年経ったと思ってるんだい? 俺たちが出会ってから……普通の人間だったら三回、いや、四回くらい人生送れてるんじゃないかな?」
 返事は無機質な電子音だ。それでも気にせずに続ける。
「死ぬまでなんて、だから俺には朝飯前だよ。……君もそうだといいけどね」
 でも、と俺は思う。俺の考えが正しければ、彼もそうであるはずなんだ。そして俺はこの考えに自信がある。だから今度こそ、気が変わらないうちに行動に移さないとね。
「さて、今から出発したら、何時に着くかな。……夜会とやらが終わって、君がただの酔っ払いと化してないことを祈るよ」
 財布と、携帯と、キーホルダー。最低限のものだけを持って、ズボンのポケットに突っ込む。それから俺は家の出口へと向かった。
 もうすぐ見れるだろう、彼の泣き笑いを頭の中に思い浮かべながら。

(了)