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ぐちゃぐちゃ

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静帝・新+セル帝・臨帝方面


 帝人は多少愚痴りたい気持ちで最近のできごとを頭の中で回していく。


 先日「好きです」と言われた。
 それに対して帝人が「そうですか」と返したら傍らにいた杏里に「少し冷たいのでは?」と言われてしまい、罪悪感にかられて「付き合いますか」と返したら相手は一も二もなくうなずいた。

 これで今月、七人目だ。

 どうなんだろう、告白されたその全てと付き合っているそれは不実ではないのだろうか。

 溜め息をついたところでどうしようもないので避難所のように見つけた背中に抱きついた。
 バーテンダー服の喧嘩人形は優しいので帝人を決して振り払うことがない。
 上司がいないので仕事中ではないだろうと勝手に思ったが、勝手な行動が許される理由にはならない。
「すみません」
「いや、どうかしたのか? 絡まれたか?」
「多少」
 と肯定してしまうと漫画のように顔に青筋を浮かばせた。
「ちょっと疲れました」
 ぎゅっ抱きついてる手に力を入れてみる。安心する。
「大丈夫か?」
 顔を真っ赤にしながら中途半端に首だけで振り返る静雄に怒りはどこに落ちたのか帝人はたずねたくなったが、同時にどうでもよくなった。
 非日常に触れたかったし、非日常を愛しているのに、非日常になりたかったわけじゃない。
(どこで間違ったかなあ)
 飲み込んだはずの溜め息がこぼれ出しそうになる。
「新羅のとこ行くか?」
「あ、セルティさん」
 目の前を通過する黒バイクに慌てて静雄の背中から離れる。
 殺気だったようなセルティに静雄は首を傾げて帝人は半ば諦めて腕を引かれて抱きしめられた。
 頭があったなら頬ずりするようなそんな勢い。
『大丈夫か?』
「ダメです」
『大変だっ』
 帝人を小脇に抱えるようにしてセルティは愛馬の元へ戻る。静雄に手だけで挨拶した。
 セルティらしくない行動だが帝人のことを考えたら仕方がないと静雄も納得していた。
 多少、羨ましいと思いながら。


「お邪魔します」
『ただいまでいいんだぞ』
「・・・・・・ありがとうございます」
 笑えないまま帝人はセルティに頭を下げる。
 新羅が奥から「おかえり」と出てきた。
 いつものようにセルティへの賛美は帝人の顔を見てぴたりと止まる。
「だいぶダメだね」
「ちょっと」
「かなりじゃないかな?」
 真面目な顔でジッと新羅に見られていると身体が熱くなってしまう。
『まずは腹ごしらえだ!』
「そうだねセルティ」
 キッチンへ向かうセルティに絶賛の言葉を投げかけて新羅は帝人の腕をとる。
 ぐったりとして自分で歩くことも難しい。
「肉体労働、向いてないんだけどなぁ」
 新羅はそんなことを言いながら帝人を引きずるようにリビングへと進む。
 ソファに座らせて許可を取ることなく帝人にくちづける。
「んぅぅ」
 いやがるように頭をふる帝人に構わず新羅は舌で咥内を荒らす。
 時間としてはわずかなものですぐに解放されたが帝人の意識は焼き切れて戻ってこない。
 上がった息をなだめるように背中をさする新羅に帝人の身体の力は抜けきってしまう。
 ぐったりと新羅に身を任せてしまえば「濃度がすごいよ。どうしてこうなったか分かる?」と頭を撫でられる。
 わかるようなら苦労はしないと帝人が瞳で訴えれば「そうだよね」と肩をすくめられる。
 鳴り響く自分の電話の音に帝人は溜め息をつく。
「やあ、臨也」
『なんで、帝人君そっちにいるわけ』
「セルティが連れてきてくれたからに決まってるじゃないか」
『運びの依頼』
「お断りだね」
『勝手に断っていいの?』
「セルティは優しいからね」
『新羅、俺が優しくないみたいな』
「優しかったら鎖の跡とかつかないだろ」
『・・・・・・見たんだ』
「そりゃあ俺も医者だからね」
『治療の範疇越えてるだろ』
「で? どうかしたのかい?」
『寄越せ』
「だから、ダメだって」
『セルティじゃ効果がないはずだろう』
「そうだね、セルティにはないね」
『新羅、おまえっ』
「怒らない怒らない。大丈夫だよ臨也。私よりもっと強敵いるからさあ」
『大丈夫じゃねえ、ぜんぜん大丈夫じゃねえ』
「あはは、普通に暮らしていてもどんどん増えていくから大変だ」
『元はといえば新羅が』
「はいはい、ごめんね。じゃあ、帝人君が辛そうだし切るよ」
『その後でいいからセルティに届けさせろよ』
「本人の意思を尊重するよ」
『俺の意思を尊重してよ』
 臨也の台詞が聞こえたのか帝人が「わがまま」とつぶやいた。
 新羅は笑って電話を切って帝人へ返す。
「大丈夫?」
「ダメです。ぎゅっとしてください」
 帝人の言葉にうなずき新羅はソファに転がりかける帝人を抱き起こす。
「新羅さんが一番落ち着きます」
「そういうこと言われると私はちょっと落ち着かないなあ」
 セルティがかに玉を持って現れる。
『ずるいぞっ! 私も私も』
 PADを掲げながらかに玉をテーブルにおき新羅と帝人に抱きつく。
「眠くなります」
「セルティが作ってくれたご飯が冷めちゃうよ」
「そうでしたね、すみません」
 帝人はあくびしながら自分の足で立つ。
 料理は見た目は悪くはないが今回は何の調味料を間違えたのかとわくわくした。
 かに玉以外は信用できない。
「案外これはこれで幸せなのかな?」
「セルティの料理が食べられるんだから、恐悦至極が当然だね」
 帝人の独り言を新羅は笑って肯定した。





作品名:ぐちゃぐちゃ 作家名:浬@