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ジェストーナ
ジェストーナ
novelistID. 25425
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はじめまして、恋。

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  カップを乱暴にテーブルに置いて、コンラッドに縋りつく。コンラッドは珍しくびっくりたような顔をしてたけど、それからふっと優しく笑っておれの頬を撫でてくれた。案ずることはないと、その目が言っている。
  コンラッドはおれの体からそっと身を引いて、一歩離れた位置に立ち、おれの肩に両手を置いて、言い聞かせるようにゆっくりとしゃべりはじめた。
  「結論から言います。これは死に至るようなものではありません」
  「そ、そうなのか。よかったぁ」
  「それでですね、これから俺がある行動をすれば、陛下の悩みが一気に解消すると」
  「えっ、ホント!? さすがだなギーゼラ、そんなことまでわかるんだ! 医者ってすごいな!」
  「ええ、でも陛下のほうがすごいですよ」
  コンラッドが含みのある笑みを浮かべた。こういう大人の余裕みたいなのかまされると、ちょっと悔しいけど、ああーカッコイイなーなんて思う。『悪いけど、裏切れない相手がいるんでね』クラスのクール発言を扱えるようになるにはこういう表情が出来なきゃダメか。
  おれがじっとコンラッドを見つめていると、おれの両肩に浮かれていた手がそっとおれの両頬を包んだ。それから、低い声で、目を閉じて、と指示。言われるまま目を閉じて、手に促されるまま上を向いて、それで、
  「……っ、」
  口唇に何か暖かい感触。思わず目を開けてみると、コンラッドの顔がアップに! ヒィ、コンラッド睫毛長ッ、ってそうじゃない!
  ちゅ。わざと音を立てて何度も繰り返し口唇を合わせてくるコンラッド。知らないうちにおれはコンラッドの背中に手を回していた。ちゅ、ちぅ、だんだん頭がぼーっとしてくる。
  やばい。おれはいますごくしあわせをかんじてる。
  何回も何回もキスして、コンラッドがようやく顔を離して、にっこりした。
  「……わかった? ユーリ。俺の恋は伝わったかな」
  そう言って、にっこり微笑んだコンラッド。
  多分今おれの顔は真っ赤になっているだろう。心臓がバクバクいって、口から飛び出してしまいそうだ。だって、野球人生まっしぐら彼女いない歴イコール年齢のおれだけど、これがそうだってぐらいはわかった。ファーストキスだったのにとかもっとしたいとか、もうそういうのはどうでもいい。コンラッドのが伝わってきたのか、それともおれが自覚したせいなのかってのはわかんないけど、齢16にしておれは知りました。
  たぶん、これが恋。


  その後、「賭け事に興味はありません」と公言していた軍曹殿が陛下特別特遇(略して陛下トト)で『名付け親でもあるコンラッド閣下に、初めての気持ち、名付けられちゃう』にものすごい額を賭けたのが兵たちの間で話題となった。コンラッドは人気株ではあるが、最近は双黒の大賢者こと村田、愛娘であるグレタ、兵士ではあるが陛下とも親しいヨザックなどに票が流れたため最近は低迷していた。だが彼女は恐れない。単勝一点買いだ。
  陛下の恋の病を見抜いたのだ。相手を見抜けぬはずがない。
  鬼軍曹はそれはそれは真っ黒な笑みを浮かべ、それを目撃した初等兵が嗚咽したのは、また別の話である。