鈴鳴の秘宝 第二章 歯車
Episode.6 帰宅
彼らがビルに帰って来たのは、朝日が昇り始めていた頃だった。
「お前が一番に入ってやりな」
「キーアちゃんすごく心配していたのよ?」
「う…」
ロイドが返事をしようとしたその刹那、支援課の扉が開き、黄緑色の髪が視界に飛び込んできた。
「ロイド帰って来たの!?」
それを見た扉の外にいた彼らは苦笑し、それからロイドがキーアを抱きかかえた。
「ただいま。キーア」
いつもと変わらない笑顔。それにキーアは安心した様子で向日葵のように笑った。
「おかえりなさい!ロイド!!」
そしてすぐに、糸が切れた人形のように眠りに落ちた。
「一晩中起きてたからな。ツァイトが布団に引っ張ろうとしたらテーブルにしがみ付いていた」
煙草を吸いながら課長が言った。そのそばでツァイトは欠伸をしていた。
「す、すみません」
「ま、無事で帰って来てなによりだ」
煙草の煙を吐き出して、灰皿に灰を落とす。
「それと、七耀教会の星杯騎士のお二人、協力感謝します」
「いやいや。シスター・マーブルの教え子の二人と話をしたかっただけですさかい」
「………」
ティオが鋭い目線をケビンとリースに送り続けていた。
「ま、あとでロイド君に聞きたい事があるんやけどね」
「聞きたい事?」
「それは追々。ほな、俺らは教会にいるんでいつでも声かけに来てください」
「…失礼します」
ケビンは右手を上げて、リースはぺこりとお辞儀をし、ビルを後にした。
「さて、この間の治安警備の話だが、遊撃士協会と協力して行う事になったのは分かってるな?」
「は、はい」
「それでこれがそのメンバーだ」
資料をロイドの手に渡す。
「読んでおけよ?あっちは今アリオスがいないからリベールから3名派遣されてる」
「…え」
ロイドの目に飛び込んできたのは
『エステル・ブライト
ヨシュア・ブライト
シェラザード・ハーヴェイ
レン・ブライト(補助員)』
それを横から見ていた3人も驚いた顔になった。
「か、課長…」
「今日の昼頃に着くらしい。また忙しくなりそうだな?」
作品名:鈴鳴の秘宝 第二章 歯車 作家名:桜桃