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鈴鳴の秘宝 第二章 歯車

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Episode.12 夜明け



魔獣が段々と減っていって気づいたら夜明けだった。
「ふぅ…でも途中から増えなくなったわね」
「さすがに眠いです…」
「二日徹夜だったもんな。エリィ達は大丈夫かな」
「しかし市中の見回り殆ど出来なかったな」
「仕方ないでしょ。市民の人達の安全確保の方が優先だし」
「…特に誰かが暴れていた、という情報もありませんし、いざとなったら一課が対応して下さるかと」
すごく眠そうな顔でティオが言う。データベースに度々アクセスしていたのだろう。
「先に帰らせてもらっていいかな?ティオが寝そうだ」
「子ども扱い…」
「いーよいーよ!おやすみなさいティオちゃん!」

「うーん…気付いてないのか、まだ戦っているのか」
最後の集団を片付けようとしていたエステル達が戦っていた頃、ヨシュアがエニグマに連絡を入れていた。
「加勢に行っても疲れるだけだし…とりあえず協会にいけばいいんじゃないか」
「そうですね…大丈夫ですか、エリィさん?」
座り込んでいるエリィを気遣い、ヨシュアが話しかける。
「ランディの動きは慣れてるけど…ヨシュアくんの動きが速すぎて…」
味方に当てないようにするために細心の注意を払った結果、すさまじく疲れた。
「しかし、鈴の音か…俺らには聞こえなかったけど、それも報告した方がいいのかもな」
「そうね…もしかしたらロイド達も聞こえたかもしれないし」
「なら遊撃士協会に戻りましょうか」
「っと、お嬢、足元に注意な」
エリィの歩く直線上でマンホールが壊れていた。
「な、何で壊れてるの!?」
「…昨日謎の爆発があったらしいわよ」
「あ…」
銀髪の女性が一枚のカードを指に挟んだ状態で腕を組んで歩いてきた。
「謎の爆発?」
「ええ。ちょうど魔獣が騒ぎだした頃に起きたらしいわ。詳しい事は調査中らしいわよ」
そんな会話をしていると、ヨシュアのエニグマに連絡が来た。
『もしもしー?こっちはやっと終わったわー…』
「お疲れ様。それで、どうしようか?僕らは一回遊撃士協会に帰るけど」
『あー、じゃああたしだけ行く。ティオちゃん寝ちゃって』
「そっか。じゃあ二人にも戻ってもらおうか?」
少し間が空く。恐らくロイドに確認を取っているのだろうが、
『…二人には話をきいてもらっておいてほしいって』
「うん、了解。じゃあまたあとで」

「以上が、あたし達の方で起こった事でした。そっちは?」
「こっちも同じだ。被害状況は外壁くらいだ。怪我人もいない」
「じゃあ破損状況は魔獣によって壊された外壁と謎の爆発によるマンホールの破損ね。分かったわ」
ミシェルが書きとめていく。
「では、私達はビルに戻ってますね」
「やーっと寝れるぜ…」
大きな欠伸をしながらランディが言う。
「あらあら、そんなんでいいのかしら?仕事私達が持って行っちゃうけど?」
「そうは言われましてもね、俺ら二日寝てないんすよ。そりゃ遊撃士ともなれば普通かもしれないですけど」
「ああ、例のロイド君の件?」
「結局誰も見ていた人がいなくて…」
エステルが閃いたようにはいはいはい!といいながら挙手をする。
「どうしたのさ、エステル」
「あたしが支援要請手伝ってもいい?その間エリィさんやランディさんは休んでて!」
胸をはり、エステルが言う。やがて空気の温度差に気付き、逆に驚いた顔になった。
「え、あたし変な事言った?」
二階からレンが笑いながら降りてきた。
「エステルってばホントおバカさんよね。わざわざライバルのお仕事を手伝う必要なんてないじゃない」
「あんですってー!いきなり話に入って来て失礼でしょ、レン!!」
「エステルの代わりにレンが行ってあげる。レンはすっごく強いんだから」
「そ、それは知ってるけど…」
レンの笑い声が不意に止む。
「でもレンは市内のお仕事はしたくないの。そこだけは分かって頂戴」
市内には、レンの家族―――ヘイワース家がある。
とくに弟には顔が知られている。下手に動くと、彼らの生活を壊しかねない。
「レン、いいんだね?」
「…ええ。じゃあ行きましょ、支援課のお兄さん、お姉さん」
作品名:鈴鳴の秘宝 第二章 歯車 作家名:桜桃