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アザレア

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 過保護っぽくて、良くないよ。献身的にされすぎると、縋りつきたくなっちゃうから、駄目だ。一度頼り始めたら、際限なく弱くなりそうで。正直言って、怖い。
 けど、どうなんだろう。なんとなくだけど。アキラは、もしかしたら、俺に甘えてほしいのかも。
 今までほとんど周囲に頓着したことなくって、なのに今の自分は他の人間に感心があるんだってこと、嬉しいみたいだから。俺に優しくすること自体、楽しくて仕方ないって風だし。おかしな話なんだけどね。俺を構いながら、やたら満足げな顔でにこにこしてて、ずっとそうしてたいって感じに、同じ動作を繰り返したりしてる。
 ほんと、なんであんなに、髪の毛を触るのが好きなのかなぁ。ちょっと問題なんだよね、あの癖。しつこく手櫛で掻き回されてると、眠たくなってきてたまんない。なまじ気持ちよすぎるから、抵抗する気力も根こそぎ萎えちゃってさ。寝てばっかりで一日終わってたとか、しょっちゅうなんだもん。
 一緒になってうとうとしてる場合はまだしも、ずっと寝顔覗き込んでるだけとかで、退屈じゃないのかな。たまにのことなら気持ちも分かるんだよ。けど、こうも頻繁にだと、飽きないのか、不思議で。観賞される側としては、心配にもなってくる。
 変な顔してたりしないのかな、俺。とんでもなくだらしない顔で爆睡してそうで、気が気じゃないんだけど。寝起きだと頭の中が弛緩気味なのも拙いし。目を開けていきなり視線が合うと、咄嗟に対処しきれなくってさ。
 前に比べてずいぶん、表情が柔らかくなったよね。びっくりするぐらい穏やかな目つきでこっち眺めてるから、まともに見返しちゃうと、やっぱり泣きたくなったりして、参るよ。色々混乱して、ぐちゃぐちゃになって、自分の芯みたいなとこが崩れそうになって。
 アキラのことは好きだし、優しくされるのも気持ちよくって、嬉しいけど。だからって、必要以上に寄りかかりたくはないんだ。依存したらいけないって知ってる。でも実際は、そうやってわりと度々、負けそうになってるから。
 だけど、もし、ちゃんと適当なところで切り上げて、上手くできるなら。少しは甘えた方がいいのかもしれないね。もっと頼ってほしい、って様子なときあるし。トシマで別れた後の話なんかを、微妙に聞きたそうにしてるときとか、特に。
 とは言ってもなぁ。俺の側としては気乗りしないし、自信もなかったりするんだよ。基本、受け身になるのは得意じゃないから。意識して向かってく段階はともかく、それでそっくり受け止められて、甘やかされたりしたら、誘惑に抗えるかどうか分かんない。もう自分の力で立ってなくてもいいや、って諦めて、一切合切投げちゃって、支えてもらうことに躊躇しないかも。
 アキラはさ、一度懐に入れた人間なら、なにをされても許しそうな気がする。しがみつかれて重たくっても、跳ね除けたりしないんじゃないかな。押し潰されるまで面倒見てくれそうだね。それでも手を離さないでいてくれるかもしれない。余計に危険だ、って思う。
 あんまり無条件に寛容ぽくされると、かえって慎重になるよ。自分のこと、たがが外れたらどうしようもなくなる類だって、知ってるし。精一杯律してないと、ろくなことになんない。現に、昔そんな感じだったわけだから。放っとくと、つい楽な方へ流されてって、独りじゃ這い上がれないとこまで転がり落ちてくんだ。ああいうの、二度と繰り返したくない。
 だから真面目に機会を計って、段取りとかもよく考えてからやらないと。手軽に叶えてあげられそうな要望じゃないし、途中で挫折しないって保証もないんだけど。でも、アキラがそうしてほしいなら、なんとかしたいね。驚いた顔とか、喜ぶ顔とか、見たいし。アキラが嬉しいなら、俺も嬉しいから。できるだけ善処する。
 錯覚とか希望的観測とかじゃなくって、間違いなく確実に、前よりも心の中身が強くなってるといいなぁ。もう、眠れない夜とかは、来ないし。近頃は悪夢とも縁がなくなった。
 もしかしたら、まだ多少は見てるのかもしれないけど。でも、夜中に目が覚めても、いつだって頭の上に手のひらの感触が降ってきて。それでまたすぐに眠くなるから。ゆっくり髪を梳かれてる感覚があると、心の底からって風に安心する。怖いものなんかなにもない、って思える。
 全然自力じゃないとこが情けないんだけど。でもまぁ、いいか。この場合、結果の方が大事だよね。少しくらい格好悪くっても、気にしないどこうかな。元々細かいことに拘らない質だし、過程に対しては目を瞑っとく。
 時々、所在なげに暗い顔してたりするから、なるべく早めにどうにかしてあげたいな。見ててこっちも辛くなるっていうか、可哀相だし、あれ。自分でも持て余してるのが瞭然でさ。理屈じゃないんだよね、ああいう気持ちって。そこのとこアキラも分かってるから、口に出してはなにも言わないんだろう。
 俺が無意味に泣きたくなるのと、根っこの理由は同じな気がする。要するに、幸せすぎて感傷的になってるってことじゃないかな。贅沢だよね、お互い。自分自身の心ってやつが、いつでも一番ままならなくって、困るね。だけど、きっと誰でもそういうものなんだろうと思うよ。
 半端なく気に病んでる感じだから、その点、ちょっと不安だなぁ。アキラってば、思い詰めると、かなりとんでもないことするから。そのお陰で助けてもらった立場ではあるんだけどさ。俺が指摘するのは筋違いかも。でも、後先考えない無鉄砲なとこもあるし、尚のこと気がかりだよ。危なっかしくて、見てると心臓に宜しくない。大丈夫だとは思うんだけどね。
 誰かのことを好きになったら、一から十まで自分のものにしたくなるのは、普通だよ。むしろ自然な感覚だと思う。俺だって、ほんとはそうしたい。だけど、現実には無理だし。やったらいけないことなんだ。束縛した分だけ、自分も相手に向かって依存することになるから。もたれ合いながら生きてると、そのまま一緒に駄目になってく、って予感がする。そういうのは嫌だよ。
 アキラも、嫌なんじゃないかな。だから黙って悩んでるんだろうし。そのうち折り合いつけるだろうから、気がつかないふりでいて、俺の方も特になにも言い出さないどく。代わりに、それとなく慰めてはあげるよ。これ以上追い詰めないようにも努力する。だから、あんまり憂鬱そうな顔しないでほしい。
 どうにもさ、言葉は難しいよねぇ。どれだけ山みたく重ねても、伝わらないことは、伝えられないから。それでも、他にどうしようもないから、繰り返し言うしかないね。
 俺だってさ、アキラが俺を好きだって思ってくれるのと同じか、それよりももっと余分なくらい、アキラのことを好きだよ。溺れてるし、他のことなんかなにも考えられないって思うときがたくさんある。ていうか、毎日毎日、アキラのことばっかり考えて過ごしてて、自分でも呆れちゃってるくらいなんだけど。手に負えないなぁ、って、諦めかけてるとこ。誤解してるほど、冷静でいられてるわけじゃないよ。
作品名:アザレア 作家名:アヤ