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テニスlog

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「何で付いてくンだよ」


ある日のこと。
天気は良好。降水確率0%。
空は高く澄み渡り、穏やかな陽射しに流れ行く白い雲。
そよ吹く風は限りなくやさしい。
この上ない、散歩日和。
何時もの様にぶらぶらと歩いていると、後ろからちょろちょろ見え隠れする小さな影。
見慣れない顔だ。
敢えて知らぬ振りをして、そのまま歩くと影も後から付いてくる。
わざと入り組んだ路に入り、足早に右へ左へ曲がってみる。
小さな闇もそれに合わせて右へ左へ。
それを視界の端に捕らえながら、さらに速度を速める。
「それ」が何かは知らないが、面倒事に巻き込まれるのはご免だ。
ただでさえ一匹狼ヨロシクやってる俺には、敵が多いんだ。
微かに収めた影の大きさ。体格差は歴然。
―――イケル。
さっきよりもまた更に速度を上げて、相手を撒こうとした、その時。

「みぎゃん!」

何とも間抜けな、そして今迄聞いた事が無い、素っ頓狂な、奇妙な声。
お陰で思わず振り向いてしまった。
――眼に飛び込んできたのは、灼熱の色。
朱い赤い、眼に鮮やかな―――。
闇の正体は、何とも色鮮やかな、上質な毛並みを持つ一匹の子猫だった。
今はどうやったらそうなるんだと直に問い詰めたい位、有り得ない程何とも阿呆な格好で突っ伏しているけれど。

「何で俺に付いて来るんだよ。お前、俺が何だか分かってんのか?」

話しかけられて吃驚したのか、眼をぱちぱちと瞬かせて、そして凄い勢いで――起きた。
しなやかな肢体。鮮やかな毛色。
そして何より眼を惹くのは、その眼差し――。
奇麗だ。
素直に、そう思った。

「見た所飼い猫かなんかだろ?迷子か?なら送ってやるから、とっとと帰んな」

殊勝にもそういう言葉が出て、正直驚いた。
何だ、送ってやるって。
どうにもこうにも、調子が狂う。

「………………ぃ」
「は?」

小さな声で呟かれて、思わず聞き返す。

「帰るトコ、ない。迷子でもないし、飼い猫でも無いよ、俺」

だから一緒に居て良い?
そう言われて大絶句。
意味分かってんのか。頭おかしいんじゃねぇの?
だって俺は―――

「犬、だぞ?」

知ってる。
即座に返され、思わず頭を抱えた。
何だコイツ。なんだこいつ。ナンダコイツ。
何だって、俺に。

天を仰げば、真っ青な大空。
ぽかぽか陽気に中てられて、俺の頭もぽかぽか思考。
煮詰まりかえって分析不能。
ヤラレタ頭で言える事は、

「来いよ。連れてってやるから」

嬉しそうに笑うその顔を見て、まあ良いかと匙を投げた。
相当頭がイカレテル。

天気は良好。降水確率0%。
空は高く澄み渡り、穏やかな陽射しに流れ行く白い雲。
そよ吹く風は限りなくやさしい。
この上ない、極上な散歩日和。
そんなとびっきりの日に、思わず拾った迷い猫。
落とす神あれば拾う神アリ。
取敢えず後者になったつもりで拾った「オトシモノ」は、
この上なく極上で、上質なものだったのかもしれない―――。


end.

作品名:テニスlog 作家名:真赭