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テニスlog

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真実を告げても軽蔑もせず罵りもせず、
ただ静かにその事実を受け止め、
それから、彼はゆうるりと微笑んだ。
その行為にどれだけ救われたか、きっと彼は知らないだろう。
込み上げる嗚咽を必死で隠し、彼に向かって俺も微笑んだ。



「ああ、やっぱりここにいた」
「不二?」
「今日は天気が良いし、英二が屋上に来たくなるのも分かるよ。例え授業をサボっていたとしてもね」
「…」
「それにここは、誰かを盗み見るには絶好の場所だしね?英二にしては、中々良いところをついてるじゃない。見直したよ」
「不二!!」
「何、いきなり大きな声だして。あいつに此処に居ることがバレちゃうよ?」
「っ…何しに来たの?」
「英二、顔真っ赤」
「不二!」
「あはは、ごめんごめん。つい、ね?」
「…何がつい、だ。この確信犯め」
「否定はしないけど、あんまりな言い方だなぁ。愛する親友を心配する余り、この真面目な僕が、学生の本分である授業を放ってまで、キミを探してここに居るのに」
「…不二、今あってる授業、お前の嫌いな奴が担当だったよな?」
「そうだったかな?」
「……何が『愛しい親友』だ」
「何か言った?」
「イエ、何モ」
「告白、しないの?」
「………出来るわけないじゃん」
「どうして?」
「どうしてって…」
「しなきゃ何も変わらないよ?特にあの、脳味噌まで筋肉で出来てる様な単細胞馬鹿には」
「…何気に酷い事言ってない?」
「気の所為だよ」
「そうか?」
「細かい事をいちいち気にしないよ」
「……」
「何か言いたげな目だね?」
「ソンナコト ハ ナイデス」

「不二は桃のこと、嫌いなの?」
「嫌いだね」
「ハッキリ言うか?フツー」
「仕方ないよ。嫌いなものは嫌いなんだし」
「…でも良い奴だぞ。優しいし」
「ふぅん」
「それに…」
「ハイハイ、分かった。分かったから」
「う~」
「そんな目で見ないの。誰だって他人の惚気話なんて、聞きたくないでしょう?」
「惚気た覚えは…」
「それが惚気てんだよ」
「…」
「…僕が彼を嫌いなのはね、英二、キミが彼を好きだからだよ」
「……何、ソレ」
「だって、キミは僕の大事な親友だもの。英二がこんな甲斐甲斐しく、桃の迷惑にならない様に屋上からひっそりと眺めてるのに、それにすら気付かないなんて」
「普通は気付かないものなんじゃないの?」
「そんな熱視線で見つめられて、気付かない馬鹿がこの世に存在すること自体、間違ってるね」
「不二、お前何か怖い」
「お褒めにお預かり、真に光栄です」
「褒めてないんだけどな」
「それに英二にそんな顔させるのも、頗る腹が立つね」
「そんな顔?」
「切ないような、苦しいような、そんな顔」
「…してる?」
「してるよ。―――でも、一番腹が立つのは、嬉しそうな顔をしてる時だね」
「どんな時?」
「アレの話をしてる時とか、ソイツと一緒に居る時、それから…」
「わー!もういいっ!!」
「あんなのに一喜一憂してる英二が不憫でならないよ」
「そらどうも」
「…それでも、好きなんでしょ?」
「うん」
「じゃ、頑張んなよ。見てるだけじゃ、何も始まらないよ?」
「うん」
「甚だ不本意だけどね。応援してるから」
「うん」
「『愛しい親友』の為に、一肌くらいは脱いであげる」
「うん」
「それが仮令、僕が嫌いな奴だったとしてもね」
「うん、アリガト」
「どういたしまして」


「でも何が腹立つって、僕が見たこと無いような笑顔を、あの筋肉馬鹿は拝んでるってことなんだよね」
「?何か言った?不二」
「いや、何も」
「ふぅん」
「ただ、英二を泣かせるような真似したら、赦さないって言ったんだよ」
「……不二」
「何?」
「俺、不二が俺の親友で良かった」
「僕も英二が、僕の親友で良かったよ」
「これからも親友?」

「英二がそう望むのならね」


end.
作品名:テニスlog 作家名:真赭