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ヨギ チハル
ヨギ チハル
novelistID. 26457
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After the party

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After the party



魔晄都市ミッドガル。
 中央の零番街に七〇階もある神羅ビルを据え置き、その周りにはプレートが八つ放射状に配置されている人工の都市である。プレートは上層部と下層部に分かれ、上層部には都市や市街地が形成され、下層部にはスラム街が広がっている。上層部はミッドガル・ハイウェイが走り、上層部と下層部は列車が螺旋状に走り、繋がっていた。煌々と光るネオンライト、車のハイビーム。途切れることのない雑踏の群れ。唸りを上げるモーター音。豊富な魔晄エネルギーのおかげで、まさにミッドガルは眠らない街だった。
場所は八番街。
【LOVELESS】の常設劇場があり、『LOVELESS通り』という作品の名前を冠に付けた通りまである。八番街はミッドガル一の歓楽街である。ここで手に入らないものはないもないのではないかと思われた。八番街の中でも立地的に零番街に近いこの地区は、ひと際高級な店がひしめき合っている。ブランドショップや、名高いレストラン。店だけではない。通りを闊歩する人々も恐らく、上層部の中でもさらに一握りの選ばれた人々だろう。
 時刻は二十時を回った。
ちょうど舞台が終わったところなのか、どうと観客が劇場の入り口から吐き出されるように出てきた。そのまま駅に向かうもの、車を拾うために一歩道路に足を踏み入れるもの、近くのクラブヘ飲みに行くもの。そして女の肩を抱いてホテルに足を向けるもの……。
 そんな人々の様子を、グラスを持ち、窓辺に寄りかかりながらつまらなそうに見下ろす青年がいた。
「ルーファウス様」
「おや。これはS&G重工のギーレンさんでしたね」
 ルーファウスと呼ばれた青年は、自分よりも二回りも三回りも年上の、貫禄のある男に微笑み軽く会釈をした。パーティーの主催の一人だった。
「ご無沙汰しております。今夜は御父上とご一緒ですかな」
「えぇ。社会勉強の一環として」
「はははは、それは。どうぞ今宵はパーティーをお楽しみください。それでは、後ほど」
今夜、ここ『ホテル シャングリ・ラ』でミッドガル中の企業の重役たちが集まるパーティーが行われていた。大通りを挟んだ劇場の真向かいにある、ミッドガルを代表する高級ホテルである。
青年の名はルーファウス・神羅。まだ少年の域を出ない歳といってもおかしくなかった。本来ならば、このようなパーティーに似つかわしくない存在だったが、彼だけは特別だった。ミッドガルを、いや世界を代表する企業『神羅電気動力株式会社』、通称神羅カンパニーの御曹司だったからだ。四〇〇人を超える参加者の中でもひと際目立つ、特注の白いスーツ。そして何よりその美貌。金髪碧眼というのはいつの世も変わらない美人の代名詞である。彼の場合は幾分青みがかってはいたが、それでもなお美しかった。うっすらと赤みがかった金髪を後ろへ軽く撫でつけている。整い過ぎているきらいはあったが、話しかければ歳相当の愛らしさも見える。
 今夜の仕事は、父親であるプレジデント神羅と共に、パーティーに参加し、愛想笑いを振りまくことだ。本来の『仕事』の部分は父親がやる。父親から与えられた役目をそつなくこなせば、あとは好きにしていい。他企業の役員夫人達もルーファウス神羅が出席する事は知っていた。遠巻きに眺めているだけのものや、積極的に話をしようとするものなど、何人もの女が彼に近づいた。だがルーファウスはそのどの女にも、一歩引いた姿勢は崩すことなく、正しく対応していた。彼ぐらいの年齢ならば、少しぐらい女が擦りよればすぐに陥落する。それなのに。派手な見た目とは裏腹に、彼の羽目を外さない品質公正な姿もさらに好感を持たれる一つの理由であった。
「そういえば、あいつの姿が見えないな……」
 ぐるりとパーティー会場を見渡しても目的の人物を見つけられずに、ルーファウスは少しだけ苛立った。自分と同じように、よく目立つ容姿をしている、彼。今夜、同じパーティーに来ているはずだった。英雄セフィロス。神羅が誇る私設兵士集団『ソルジャー』1stであり、またソルジャ―全体の実質的トップであった。メディアもこぞって彼を報道したために、彼の名前を知らないものはミッドガルどころか、世界中にだっていないだろう。実績や人柄もさることながら、二メートル近い身長と、流れるような美しい銀髪が美しいと評判だった。子供のみならず、万人から絶大な人気を集めていた。
 ルーファウス神羅と英雄セフィロスが揃うことなどめったにない。今夜のパーティーには彼らを一目拝んでおきたいとパーティーに参加した者も数多くいる。ルーファウスは取り巻きをあしらい、もう一度会場を見まわした。やはり彼はいない。正面に視線を戻すと、急に人影が目の前を通り過ぎた。
「あっ」
「おっと失礼……。これは、ルーファウス様ではないですか」
 どん、と音を立てて男の背中にルーファウスはぶつかった。グラスに何も入っていなかったのが幸いだった。男はふらついたルーファウスの手首を掴み、危うく倒れそうになるところを助けた。
「すみません。余所見をしていたようです。ミスター・ベイライン」
「お怪我はありませんか」
「あなたこそ」
 ベイラインと呼ばれた男はルーファウスと顔見知りだった。二十代後半の青年実業家である。何度かこうしてパーティーの場で話したことがあり、歳も他のもの達よりかは近いせいもあって、気安さもあった。ルーファウスの手からグラスを取り上げ、近くを取り過ぎたウエイターに預ける。
「ルーファウス様、これからお時間はおありですか。あなたとは、一度じっくりお話ししてみたかった」
「私も。先ほどからこのパーティーに飽き始めていたところです」
「それはよかった。ここは息苦しくて仕方がない」

 
* * *


 華やかに着飾った女達や自慢話をする男達の間をくぐり、ルーファウスとベイラインの二人はホールを抜け出た。外に出ると同じような境遇の者たちが廊下の隅に設置されたスツールに座っていた。豪奢なシャンデリアが吊るされ、隅には大きな花も飾られていた。ミッドガルでは珍しい、生花だった。ホールの外で話すのかと思っていたルーファウスは、歩みを止めないベイラインを呼びとめた。
「どこへ、行くのですか」
「商談用の個室があります。あなたも静かな部屋の方がいいだろうと思いまして」
 廊下を挟んだホールの向かいには、ホールの五分の一ほどの小さなサロンと、いくつかの個室があった。どうやらこのパーティーはフロアを全て借り切っているようだ。開かれたままのドアからサロンの中を覗けば、そこにも人はいた。思ったよりも大勢の人々が参加しているのだろう。ベイラインに気づいたボーイがある部屋に案内した。
「こちらです」
ドアを閉めると、外の喧騒はほとんど聞こえなくなった。
 振り向きざまにベイラインを見ると、ルーファウスは細い手首を掴まれキスをされていた。
「な……っ、ん」
「ドアに鍵はかけませんよ。ご安心ください」
「何」
「まぁ、おかけなさい」
作品名:After the party 作家名:ヨギ チハル