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リョ菊log

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始動前




最近、夢中になってるものがある。
それは最近出た待ちに待ったゲームだったり、色々な種類の煎餅を試してみることだったり、
それから

「菊丸 英二」

その人にも




「おっチビー!今日一緒に帰ろ?」

部活終了後、いきなり抱き付かれ首を傾げつつ、上目遣いでそう問われる。
…分かっててやってるのだろうか。
こんな風に誘われて、断れる人間はまずいないだろう。
俺も例に漏れず。

「良いっスよ」

かくして、この人の気紛れな人選によって俺と菊丸先輩は、二人仲良く(?)帰宅する事となった。


この人と一緒に歩く時、俺は必ず彼の二歩先を歩く。
隣に並んでは、決して歩かない。
それはまだ早い。

「おチビって、必ず俺の前を歩くよね」

殊更気にした風もなく、彼はどこかあらぬ方を見ながら(何か気になるものでも見つけたのだろう、先刻からずっとそちらばかりを見ている)そう呟いた。

「嫌っスか?」

そう問い返せば、や、別に嫌じゃないけど。なんでかな~と思ってさ、なんて返答が返ってきた。

「待ってるんスよ」

溜め息混じりでそう、答える。

「何を?」
「ここまで来るのを」
「はぁ?」

最近、夢中になってるものがある。
それはゲームだったり煎餅の食べ比べだったり、
それから、貴方。

俺は待ってるんスよ?
貴方がここに来るのを。

――ここまで、来るのを。


たった二歩。されど二歩。
短くて、遠い。


俺ばっかり貴方に夢中だなんて、それは少し、寂しいでしょう?
悲しいでしょう?
だから

ねぇ、だから
早くここまで来てよ。
いい加減、気付いて。


貴方を窺い見れば、訳が分からない、といった表情。
それに少し苦笑して。

「それより腹、減りません?何か食ってきましょうよ」

さらりと話題を擦り換える。


お願いだから、なるべく早く、ここに来て?
俺はいつまででも待つけれど。
でもなるべくなら、早く肩を並べて歩きたいから。

早く俺に、夢中になって?


end.

作品名:リョ菊log 作家名:真赭