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ヨギ チハル
ヨギ チハル
novelistID. 26457
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IGNITION, SEQUENCE, START

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IGNITION, SEQUENCE, START


「一度、あなたとやってみたかったんだ」
湧き上がる興奮を悟られないように、アキラは落ち着いた声で言った。だが態度までは気が回せないのか、弾むような足音と満面の笑みは隠せなかった。
「私と君が戦うのは初めてか。オーバーフラッグスの時に模擬戦ぐらいしただろう」
「相手をしてもらった隊員もいただろうけれど、俺にそんな機会はなかったです」
「そうだったかな」
思い出すようにグラハムは指先で唇をなぞった。
「そうですよ」
初めての対戦。
一度死んだものと思っていた彼が目の前にいる。
それだけで、自然と口角が上がるのが分かる。
壁に掛けられたヘッドギアを二つ掴んで、アキラは先を歩くグラハムを追いかけた。

こんなチャンス、逃せるか。



たとえオーバーフラッグスといえども、アキラはそのうちの一兵士にしか過ぎなかった。グラハムはユニオン全土から集められた精鋭達を束ねる隊長だった。オーバーフラッグス隊が解散されたのち、多くの隊員はジンクス部隊に再編成されたが、アキラは地上に残された。それはGNドライブの数が合わなかったからなのか、アキラの実力が伴わなかったからなのか、あるいは別の理由があったからなのか。今となってもわからないままだ。
地上で地球連邦軍の一人として勤務するなか、二三〇八年のソレスタルビーイング戦において、アキラは次々と共に空を飛んだ仲間たちの訃報を聞くことになった。その中には隊長であったグラハムのものも含まれていた。
Missing In Action(戦闘中行方不明)
いてもたってもいられず兵舎を飛び出したところで、基地の演習場から見上げる空には何も遮るものはなく、ただただ広いばかりだった。微かに輝くものがあれば、それは星々の瞬きなのか、MSの破片なのかさえ、判断がつかなかった。大きな戦いがあれば、地上からでもわかる。戦艦やMSの破片が地球の引力に引かれて降り注ぐのだ。その破片の殆どは地上に落ちる前に大気圏で燃え尽きてしまうが、いくつかは大きな火球となって空を焼く。
その炎を、アキラは知っている。
後に地球連邦軍の中から精鋭を集めてA―LAWSが結成された。その中にグラハムと思しきパイロットがいるという噂を聞けども、その噂を確かめる術を連邦軍所属であったアキラは持たなかった。
MIAから七年。まさかグラハムと再び出会えるとは思ってもみなかった。まだ試験運用の段階であったブレイヴのテストパイロットとしてアキラは登用され、またブレイヴの試験運用専任部隊であるソルブレイヴス隊に配属となった。そして向かった基地に同じように登用されたテストパイロット達をまとめ上げる隊長として、彼、グラハム・エーカーはいた。七年前とは違い、顔の右側に酷い傷を残して。それは先の戦いにおいて負った傷なのか、あるいはA―LAWSに在籍していた時に負った傷なのか。あえて聞かなかった。軍人ならば傷など、身体のどこにでもあるものだ。むしろ箔が付いていい。ユニオンでは金髪碧眼の美丈夫だった。傷を負ってもなおその美しさは変わらず、今でもその年齢不詳さは変わらない。
もう一度、会いたいと思っていた。
かなうならば、もう一度、彼の元で戦いたいと。
正直諦めていた。グラハムの情報は派手に噂される割には少なく、公式のプロフィル以外には、彼の代名詞であるフラッグカスタムⅡのフライトデータぐらいしか残されていなかったのだ。何度彼の背中を追ったかわからない。何度シミュレーターに彼のデータを打ち込んだかわからない。それでも、データ上のグラハムに一度も勝つことはできなかったが。

MS開発は基礎となるMSが元どこの陣営のものであったかで、開発陣が大きく変わる。ブレイヴは元ユニオンとAEUの技術者たちが中心となって開発した機体だった。だがそのパイロットであるソルブレイヴス隊といえば、ユニオンとAEUはもちろん、傭兵稼業と謳われた元PMCトラスト出身の者までいた。そのせいでソルブレイヴス隊は陰で【寄せ集め集団】とも言われている。在籍していた組織も、乗ってきた機体も各々違う。これだけ系統が違うパイロットが一カ所に集まる事も少ないだろう。しかしブレイヴ機は試験運用機。多くのデータが取れるならば、機体に反映させればよいだけのことである。
グラハム・エーカー少佐が元オーバーフラッグスの隊長であったことは、ユニオン出身以外の隊員達も知っていた。アキラにとっては直属の上司であった。訓練の休憩中にアキラはふと口にして気づいてしまった。少佐と一度も手合わせしたことがないと。隊員へ少佐のユニオン時代の想い出話を聞かせている途中で、アキラは思い出したのだ。
隊員の中で誰よりも少佐、いや隊長に詳しいと思っていたのは自分なのに。
グラハムはといえば熱い口調で語るアキラに苦笑しながらも、「ならばやってみるかね?」と軽く声をかけたのだった。
「えっ、そんな。いいんですか隊長」
「少佐だってお忙しいだろうに」
「なに、ちょっとした余興だよ。なぁアキラ」
動揺するアキラに向かって、グラハムは基地の隅にあるシミュレーターを指差した。
「面白そうじゃないか。やるのか、やらないのか」
「やっ、やるに決まっているだろう!」
「言いだしたのはアキラなんだ。逃げるなよ」
「少佐にかなうはずないだろう。なにせ『元オーバーフラッグス』の隊長だ」
ことさら強調してルドルフが言う。アキラにプレッシャーをかける方法を知っているのだ。
「それは俺が一番よく知っている。いいから黙っていろ!」
囃したてるイェーガン達の声を振り切るように、アキラは立ち上がった。
グラハムと連れだって基地の隅に置いてある二機のシミュレーター機に近づく。バシュッと圧が抜ける音を立てて、ハッチが上に跳ね上がる。一方のシミュレーター機のハッチを掴んで、アキラはグラハムに振りかえった。
「隊長、俺、本気で行きますから」
「もちろん。私とて手加減しないさ」
ハッチの中を覗き込むとそこにはMSと同じコクピットが鎮座しており、正面、左右と三面のディスプレイが展開している。コンソール部分、コントロールスティックなどもMSと同じものが流用されていた。通信用のヘッドギアをかけて、グリップを握る。
「さぁネフェル、始めてくれ」
オペレーターを務めるネフェルにグラハムが伝えると、ネフェルは端末を操作し始めた。
「モニタ映します。各自、機体の選択をしてください」
端末に付属している大型モニタにシミュレーター一号機に搭乗するグラハムと、二号機に搭乗するアキラの顔が映し出される。グラハムは余裕といった顔つきであるが、アキラには緊張している様子が見て取れた。
「まがりなりにもソルブレイヴスの一人なんだからな。せいぜい粘ってくれよ」
「おい」
「なんだ」
「お前ら、どっちに賭ける」
イェーガンがヴィクトルとルドルフの肩に腕をかけ、顔を近づけた。
「少佐に決まっているだろう」
「一〇〇回やったって、アキラが勝てるとは思えねぇ」
「アキラが下手なわけじゃないのだが。少佐相手じゃ分が悪い」
「三人そろって何をしている」
ヘッドギアをかけたネフェルが三人を見据えた。