君に言祝ぐ日
「……ありがとう」
祝われるのも久しぶりだと笑う彼に、僕もでしたよと返す。互いに密やかに笑いながら、語り合う言葉は途切れない。いつもの調子を取り戻した臨也が朗々と弁を説き、それを苦笑しながら聞き流す。
やがて眠りに誘われた時も、臨也は穏やかに笑って何事かを囁いた。まるで子守唄のような言葉に、思わず帝人は笑ってしまう。
互いに気恥ずかしさを抱えながら、言葉を交わす。ぽつぽつと紡がれる言葉が途切れることなく続いてゆくことが心地いい。
全く持って、とんだ日だと帝人は思う。だが、決してそれだけでは終わらない日でもあったと。
耳はじんじんと熱を持ち、痛みもある。だけれども、耳を飾るひと粒が嬉しいなどと思ってしまうのは、やはり惚れた弱みというやつなのだろうか。
居れるところまで隣に居よう、と帝人は思う。永遠など望まない。いつか壊れるものだと知っているから。
新宿の情報屋の気まぐれがいつまで続くかは分からないが、それでも。彼が自分を繋いでおこうと思った時間くらいは、共に有ってもいいと思う。
だからこそ。
「……? 帝人くん、どうしたの?」
怪訝な顔をしてこちらを見る臨也に帝人は微笑む。
「なんでもありません」
「そんなこと言って。すっごく嬉しそうなんだけど」
「それは当り前です」
応えながら、願う。
どうか、この一年が幸いに満ちたものになるように、と。