だぶるおー 天上国 王妃の日常3
翌日の朝から妖精王と王妃が連れ添って、エイフマン教授の滞在している部屋に赴いた。抱き上げて連れて行くと、王は言ったのだが、そんな羞恥プレーは勘弁してくれ、と、王妃が怒ったので、ちゃんと、腰は治してもらったから歩いている。
「朝から、残念なことをお伝えしないとなりません、教授。」
来訪の挨拶を、ニールが済ませると、用件を切り出した。昨夜、ビリーさんが夜這いに参られまして・・・と、言い出すと、教授も顔色が青くなった。
「陛下が、俺の看病をしてくださっていたので大事には到りませんでしたが・・・その・・・陛下が、その場で国外へ追放されてしまいました。」
「申し訳ないが、あなたの助手は、王妃の傍に滞在させるのは危険なので、やむなく、そうさせていただいた。」
「助手がいなくては、お困りのこともあると思いますが・・・・その代わりは、俺が勤めますので、ご不自由はおかけしないようにいたします。」
ひとりで異国で暮らすというのは、何かと不自由なものだ。ジョシュアとニールは、顔見知りだから、そのふたりでフォローをするということで、朝から刹那とも打ち合わせた。
「こちらこそ、助手の失礼はいかばかりかと・・・申し訳ない。」
さすがに昨日の出来事もあったばかりだから、教授のほうも、あっさりと謝っただけだ。とりあえず、仕事中の助手代わりは、ニールが担当するということになっているが、こちらも、教授にべったりとは出来ない。王が拗ねるからだ。
ということで、助手の代わりに、もう二人ほど補充されることになった。ハレルヤの奥方のマリーとスメラギだ。ニールが居ない時は、そのふたりで補佐しますので、と、説明して了承してもらった。スメラギも、最初の数日は案内をしていたから、見知らぬ相手ではないし、マリーは大人しい女性だから、こちらも手伝いぐらいならできる。
「そこまでしていただかなくても、イアンさんのところで仕事をする分には、問題はありますまい。王妃のお手を煩わせるほどではない。」
「いえいえ、俺がお願いして来ていただいたんですから、手伝わせてください。もう具合はいいので、大丈夫です。」
というか、明日から起きてこられる保証はないのだが、そこは刹那に治してもらうつもりだ。
午前中の技術院での設計の打ち合わせは付き合ったが、陛下が呼んでいる、というアリーの伝言に引き返した。食事休憩の内なら、と、王の執務室に向かおうとしたら、ハレルヤの執務室の前に、ハレルヤと、その奥方が仁王立ちで待っていた。
「よおう、ハレルヤ。」
「おう、生きてるか? ニール。」
付き合いが長いし、親友だから挨拶も軽いものだ。そして、その横に居る奥方にも挨拶しようとしたら、いきなり鉄拳が出てきた。それは、すらりとよけた。当たると、ニールでも吹っ飛ぶ威力だから当たらないに限る。鉄拳が出てくるということは、強制的にさっさと、ニールを動かしたいという意思の現れだ。
「ソーマか、なんだ? 」
ニールは、驚きもしない。ソーマは無口なほうだから、まず行動が先だ。だから、いきなり鉄拳が飛んで来る。ハレルヤの奥方は、かなり変った妖精の取替え子で、ふたつの人格がひとつの身体に収まっている。ひとりは、ソーマ。現在、表に顔を出している無口だが身体能力の優れた女性だ。そして、もう一人が、マリー。こちらは、大人しくて穏やかな性格の女性だ。「鬼のソーマ」「仏のマリー」という愛称が、その性格を物語っていたりする。
「昨日、ハレルヤと狩りに行って、新鮮な肉を獲って来た。用意させたから、ここで食え。ハレルヤに心配をかけるのは感心しないぞ? ニール。」
「ああ、ありがとう。刹那は? 」
「陛下もいる。おまえは体力をつけないといけないから、一杯食え。」
ぶっきらぼうなのだが、ま、ソーマの言葉を解釈すると、かなり痩せたから、滋養のあるものを食べて回復してくれ、と、いうことらしい。ニールは、微笑んで、ソーマの頭を撫でて、ハレルヤにも礼を言う。
「はいはい、ありがとさん。悪いな、ハレルヤ。気を遣ってもらって。」
「いや、さすがに、ごっそり体重落とされると、俺でも気になる。とりあえず、温かいうちに食おうぜ、ニール。アレルヤもティエも待ってる。」
ハレルヤの執務室には、会議が開けるように円卓が配置された部屋もある。そこに、食事を準備させたので、こちらに案内された。
「じゃあ、俺は食堂へ行く。」
護衛しているジョシュアが、踵を返そうとしたら、「おまえの分もあるぜ。」 と、ハレルヤが肩を叩く。一々、護衛とか王妃とかいう立場なんぞ気にしないでいい、と、ジョシュアも誘った。
「冷めちゃうよ? ほら、座って。」
円卓には、確かにたくさんの鳥の丸焼きが鎮座していた。どんだけ狩ってきたんだ? と、驚くほどの量がある。それと、茹でた野菜が、本日の昼食だ。わいわいと食事が始まると話題は、王妃の夜這いについてだ。
「ニールに夜這いって、趣味が悪いというか、どんだけ軽んじてんだか・・・ったく。」
むぎっと鳥の足を齧りつつ、ハレルヤが代表して感想を述べる。ここにいるのは、ニールのたらし能力にたらされない人間ばかりだから、概ね、そういう意見だ。
「ティエリアほどじゃないけれどニールも綺麗だから、そういう人もいるんじゃないの? てか、ハレルヤ、それ、ニールにすごく失礼だ。蓼食う虫も好き好きって言うだろ? 」
行儀良くナイフとフォークで鳥肉を切り分けて口に運んでいるアレルヤが、ハレルヤに反論する。
「おまえのほうが何気に酷いこと言ってるぞ? アレルヤ。」
すかさず、ジョシュアがツッコミだ。
「ご無礼。だって、僕らからしたら、ニールに、そういう魅力は感じないんだから、そういう意見になるよ。ジョシュアだって、そうでしょ? 」
「そりゃ、俺もニールに色気は感じないけどさ。てか、こいつにムラムラすんのは、グラハムと王だけだと思ってたぜ。」
「おまえら、ふたりとも、失礼だ。」
ハレルヤがツッコミ返して笑っている。言われているほうは、気にしていない。刹那とティエリアとソーマの分を取り分けるほうに気が向いていて聞いてないので、スルーだ。
「ソーマ、しっかり食べな。おまえさんの戦利品なんだからな。ティエリア、ニンジンも食べろ。刹那、俺のとこへじゃがいもを放り込むな。好き嫌い禁止。」
で、ごちゃごちゃと注意もするので、構われている三人は、声を揃えて、「「「おまえが食べろ。」」」 と、怒鳴る。
「私は、おまえのために狩りに言ったんだ。ニールが食わないでは意味がない。」
「俺たちに好き嫌い禁止というなら、あなたも、さっさと食べてください。食欲が湧かないなら、消化剤を用意させますよ? ニール。」
「俺たちのことは、自分でするから、あんたが食え。」
三人三様にツッコミするので、はいはい、と、ニールも口をつける。会食じゃないと、万事この調子だ。
「それで、刹那。バカの記憶は弄らなかったのか? 」
「これといって、機密事項には、まだ触れていないから、そのまま返した。」
「そんなものは殺して捨てればよかったんだ。なぜ、生かしておく? 手緩いぞ。」
「そうもいかないだろ? 教授の助手なんだからさ。」
「朝から、残念なことをお伝えしないとなりません、教授。」
来訪の挨拶を、ニールが済ませると、用件を切り出した。昨夜、ビリーさんが夜這いに参られまして・・・と、言い出すと、教授も顔色が青くなった。
「陛下が、俺の看病をしてくださっていたので大事には到りませんでしたが・・・その・・・陛下が、その場で国外へ追放されてしまいました。」
「申し訳ないが、あなたの助手は、王妃の傍に滞在させるのは危険なので、やむなく、そうさせていただいた。」
「助手がいなくては、お困りのこともあると思いますが・・・・その代わりは、俺が勤めますので、ご不自由はおかけしないようにいたします。」
ひとりで異国で暮らすというのは、何かと不自由なものだ。ジョシュアとニールは、顔見知りだから、そのふたりでフォローをするということで、朝から刹那とも打ち合わせた。
「こちらこそ、助手の失礼はいかばかりかと・・・申し訳ない。」
さすがに昨日の出来事もあったばかりだから、教授のほうも、あっさりと謝っただけだ。とりあえず、仕事中の助手代わりは、ニールが担当するということになっているが、こちらも、教授にべったりとは出来ない。王が拗ねるからだ。
ということで、助手の代わりに、もう二人ほど補充されることになった。ハレルヤの奥方のマリーとスメラギだ。ニールが居ない時は、そのふたりで補佐しますので、と、説明して了承してもらった。スメラギも、最初の数日は案内をしていたから、見知らぬ相手ではないし、マリーは大人しい女性だから、こちらも手伝いぐらいならできる。
「そこまでしていただかなくても、イアンさんのところで仕事をする分には、問題はありますまい。王妃のお手を煩わせるほどではない。」
「いえいえ、俺がお願いして来ていただいたんですから、手伝わせてください。もう具合はいいので、大丈夫です。」
というか、明日から起きてこられる保証はないのだが、そこは刹那に治してもらうつもりだ。
午前中の技術院での設計の打ち合わせは付き合ったが、陛下が呼んでいる、というアリーの伝言に引き返した。食事休憩の内なら、と、王の執務室に向かおうとしたら、ハレルヤの執務室の前に、ハレルヤと、その奥方が仁王立ちで待っていた。
「よおう、ハレルヤ。」
「おう、生きてるか? ニール。」
付き合いが長いし、親友だから挨拶も軽いものだ。そして、その横に居る奥方にも挨拶しようとしたら、いきなり鉄拳が出てきた。それは、すらりとよけた。当たると、ニールでも吹っ飛ぶ威力だから当たらないに限る。鉄拳が出てくるということは、強制的にさっさと、ニールを動かしたいという意思の現れだ。
「ソーマか、なんだ? 」
ニールは、驚きもしない。ソーマは無口なほうだから、まず行動が先だ。だから、いきなり鉄拳が飛んで来る。ハレルヤの奥方は、かなり変った妖精の取替え子で、ふたつの人格がひとつの身体に収まっている。ひとりは、ソーマ。現在、表に顔を出している無口だが身体能力の優れた女性だ。そして、もう一人が、マリー。こちらは、大人しくて穏やかな性格の女性だ。「鬼のソーマ」「仏のマリー」という愛称が、その性格を物語っていたりする。
「昨日、ハレルヤと狩りに行って、新鮮な肉を獲って来た。用意させたから、ここで食え。ハレルヤに心配をかけるのは感心しないぞ? ニール。」
「ああ、ありがとう。刹那は? 」
「陛下もいる。おまえは体力をつけないといけないから、一杯食え。」
ぶっきらぼうなのだが、ま、ソーマの言葉を解釈すると、かなり痩せたから、滋養のあるものを食べて回復してくれ、と、いうことらしい。ニールは、微笑んで、ソーマの頭を撫でて、ハレルヤにも礼を言う。
「はいはい、ありがとさん。悪いな、ハレルヤ。気を遣ってもらって。」
「いや、さすがに、ごっそり体重落とされると、俺でも気になる。とりあえず、温かいうちに食おうぜ、ニール。アレルヤもティエも待ってる。」
ハレルヤの執務室には、会議が開けるように円卓が配置された部屋もある。そこに、食事を準備させたので、こちらに案内された。
「じゃあ、俺は食堂へ行く。」
護衛しているジョシュアが、踵を返そうとしたら、「おまえの分もあるぜ。」 と、ハレルヤが肩を叩く。一々、護衛とか王妃とかいう立場なんぞ気にしないでいい、と、ジョシュアも誘った。
「冷めちゃうよ? ほら、座って。」
円卓には、確かにたくさんの鳥の丸焼きが鎮座していた。どんだけ狩ってきたんだ? と、驚くほどの量がある。それと、茹でた野菜が、本日の昼食だ。わいわいと食事が始まると話題は、王妃の夜這いについてだ。
「ニールに夜這いって、趣味が悪いというか、どんだけ軽んじてんだか・・・ったく。」
むぎっと鳥の足を齧りつつ、ハレルヤが代表して感想を述べる。ここにいるのは、ニールのたらし能力にたらされない人間ばかりだから、概ね、そういう意見だ。
「ティエリアほどじゃないけれどニールも綺麗だから、そういう人もいるんじゃないの? てか、ハレルヤ、それ、ニールにすごく失礼だ。蓼食う虫も好き好きって言うだろ? 」
行儀良くナイフとフォークで鳥肉を切り分けて口に運んでいるアレルヤが、ハレルヤに反論する。
「おまえのほうが何気に酷いこと言ってるぞ? アレルヤ。」
すかさず、ジョシュアがツッコミだ。
「ご無礼。だって、僕らからしたら、ニールに、そういう魅力は感じないんだから、そういう意見になるよ。ジョシュアだって、そうでしょ? 」
「そりゃ、俺もニールに色気は感じないけどさ。てか、こいつにムラムラすんのは、グラハムと王だけだと思ってたぜ。」
「おまえら、ふたりとも、失礼だ。」
ハレルヤがツッコミ返して笑っている。言われているほうは、気にしていない。刹那とティエリアとソーマの分を取り分けるほうに気が向いていて聞いてないので、スルーだ。
「ソーマ、しっかり食べな。おまえさんの戦利品なんだからな。ティエリア、ニンジンも食べろ。刹那、俺のとこへじゃがいもを放り込むな。好き嫌い禁止。」
で、ごちゃごちゃと注意もするので、構われている三人は、声を揃えて、「「「おまえが食べろ。」」」 と、怒鳴る。
「私は、おまえのために狩りに言ったんだ。ニールが食わないでは意味がない。」
「俺たちに好き嫌い禁止というなら、あなたも、さっさと食べてください。食欲が湧かないなら、消化剤を用意させますよ? ニール。」
「俺たちのことは、自分でするから、あんたが食え。」
三人三様にツッコミするので、はいはい、と、ニールも口をつける。会食じゃないと、万事この調子だ。
「それで、刹那。バカの記憶は弄らなかったのか? 」
「これといって、機密事項には、まだ触れていないから、そのまま返した。」
「そんなものは殺して捨てればよかったんだ。なぜ、生かしておく? 手緩いぞ。」
「そうもいかないだろ? 教授の助手なんだからさ。」
作品名:だぶるおー 天上国 王妃の日常3 作家名:篠義