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だぶるおー 天上国 王妃の日常3

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「ニールは甘すぎる。私なら、その場で瞬殺だ。」
「ソーマ、それはダメだって、教授を怖がらせたら、仕事してもらえないだろ?」
 昨夜の出来事についての意見が交わされる。まだ日も浅いから、これといって城のことも詳しくないので、そのまま国外へ放り出した。その確認もあった。
「ジョシュア、ユニオンは変人の多い国なのか? 」
 何気なく刹那が質問すると、ぶほっとジョシュアが喉を詰まらせる。ぐふぐふと噎せて、アレルヤが渡してくれた水で息を整えると、「んなわけあるかっっ。」 とは返す。
「ビリーは、グラハムの親友でさ。あいつら、ふたりとも変わってるんだ。それは認めるけどな。あんなのばっかりじゃない。あれのほうが例外だ。」
「グラハムの親友か・・・そうか、そういうことならわかるなあ。」
 しみじみとニールが思い出して頷く。言葉が通じないこと、この上もないグラハムの親友をやってられるなら、相当、変わり者だろうとは予想できる。
「やっぱり、親友ってことは類友ってことかな。」
「まあ、そうだろうな。どっちも本職では優秀なんだけど、どっか常人じゃないっていうーか、おかしいっていうかなんだよなあ。」
「黒の城って、もしかして左遷用? 」
「だから、仕事ではグラハムも優秀なんだってば。黒の城のオーバーフラッグス隊といえば、選ばれたらエリートと言われてるんだぞ? 」
「おい、ジョシュア、おまえ、自慢してないか? 」
「してねぇーよ。俺は無理矢理、任官させられたの。」
 本来なら、こういう話は、教授が到着した日にでもされているものだが、ニールが寝込んでいて、ジョシュアも教授と対面するのが遅れたので、今頃、こんなことになっている。
「ソーマ、教授の助手は大丈夫か? イヤならいいんだぞ? 」
「問題ない。イアンたちがいるから、わたしは護衛か話し相手だと思われる。それに、そちらはマリーの担当だ。」
「それならいいんだけど。」
「そっちは、いいから、刹那の相手してあげてよ? ニール。午後から遠乗りでもしてきたら? 」
「いや、今日は一日、教授のフォローをさせてもらう。」 
 初日から抜けるのはまずかろうと、ニールが言うと、刹那も頷く。召還した客人のフォローは、本来、ニールの担当だから、刹那のほうも止めない。
「刹那、材木の切り出しにラッセとリヒティーが北の森へ行ってるけど、きみも行くかい? 午後から、僕とティエリアも行くつもりなんだ。」
「ああ、手伝おう。」
 魔法力のある人間ばかりだと、こういう時は便利だ。近所の住人たちを仕事に借り出さなくても、自分たちで出来てしまうからだ。ひとりで、普通の人間の何十人か分の仕事量をこなせる。切り出して枝打ちして、日の当たるところへ並べて乾燥させるという一連の仕事が、数日で出てきてしまう算段だ。
「じゃあ、ソーマは俺と一緒においで。教授と顔繋ぎしておこう。」
「了解した。」
「おい、マリー。ニールが動き過ぎないように見張っとけ。」
「わかりました、ハレルヤ。そちらは任せて。ニールにべったりとくっついていますわ。」
 ハレルヤの呼びかけで、人格が入れ替わる。言葉遣いも態度も変るので、見慣れないジョシュアだけは食事の手が止まる。
 午後からの予定を確認しつつ、食事して、そこにあった大量の食材は、綺麗さっぱりと、みんなの胃袋に納まった。さて、働くか、と、ニールが声をかけると、おーと、全員、立ち上がる。
「ソーマ、ちょっと待っててくれ。」
 アレルヤとティエリアが、ニールの言葉に立ち止まって戻って来た。何か気付いた様子だ。
「ジョシュア、おまえさん、あのビリーさんとは顔見知りか? 」
「ああ、一応はな。」
 それで、アレルヤたちも気付いた。除隊したユニオンの軍人が、こちらにいるとバレたということに他ならない。
「それ、ちょっとまずいね。」
「なんで? ちゃんと除隊してあるぜ? 」
「ジョシュア本人じゃねーよ。おまえの家族、ユニオンに残してるだろ? なんかあったら、確実に人質扱いにされる。」
 そう言われて、ジョシュアも、あっと気付いた。ビリーは、軍の高官の縁戚で、特別待遇の技術顧問という地位を拝命している男だ。何かしらのアクションを起こすとなれば、そこから攻めてくることも考えられる。
「いや、そこまでしないだろう。それに、この国には勝手に入れないんだから、脅すっていっても無理じゃないか? 」
「うちの国の境界ギリギリに脅しにくれば、それは、こちらも察知できる。それに、おまえの田舎は、随分遠いところなんだろ? そこから、家族が引き立てられてくるなんて、怪我ぐらいですまないぞ。」
「けどよ、ハレルヤ。それで脅しに来て、俺を引っ張り出して首を刎ねたところで、ユニオンには、あんまり益があるとは思えないがな。」
「それをエサにニールは釣れると踏んでるだろうよ。人質が大事なら、王妃一人で来い、とか、言われると、うちのバカ王妃は、ほいほいと出て行くからな。」
 そうなのだ、そういう手は使える。ただし、領域の近くなら、内から魔法力で人質は救出できるので、それほど問題はないと言えば、ないのだが、ジョシュアの家族に多大な迷惑がかかるし、ユニオンに住めなくなってしまう。
「刹那、ビリーさんの記憶を今から弄れないか? 」
「無理だ。ただの人間を遠見で探すのは無理がある。」
 情勢を遠見するぐらいは訳もないが、一人の人間を限定して探すのは、刹那にしても大変だ。特徴になる気配や妖精の血がないと、大勢居る人間のひとりだけを探すというのは骨が折れる作業だ。
「黒の城の傍に跳ばしたんだな? 」
「待て、ニール。おまえ、また一人で出るつもりだろ? 」
 ジョシュアは、ニールの考えの先を読んで止めた。前回、知り合うきっかけになった事件の時も、ニールの単独行が原因だった。外に向かって使える魔法力のないニールが単独で動けば、またグラハムのようなおかしなのに捕まってしまう場合も考えられる。それは護衛として許可できることではない。いくら、自分の家族のためとはいえ、ニールに危険が及ぶのは困る。
「けど、ジョシュア。そういうのなら、俺がたらしてくればさ。」
「あほかっっ、おまえはっっ。あそこには、グラハムがいるんだぞ? 今度こそおまえの貞操がなくなるわっっ。・・・・陛下、こいつ、動けないくらい抱き潰してくれ。」
 ニールにたらされないジョシュアというのは、そりゃもう容赦なくツッコミが入る。さすがに、ニール本人が感心したくらい誑かされてくれないので、こんなことを言い出す。アレルヤ、ティエリア、ハレルヤ、マリーは感心して、おーと感動して拍手していたりするぐらい新鮮だ。
「確かに、ニールに動かれるのは厄介だ。刹那、俺も許す。今からやってこい。黒の城なら以前、跳んでいるから俺が行って来る。暗示くらいなら俺で十分だ。」
 ティエリアにしても勝手に動かれるくらいなら、腰が痛いとベッドで唸ってもらっているほうが安心だ。
「そうだね、ティエリア。僕ときみとで行って来よう。どうせ、昨日の今日だから、動いてないだろうし、城全体に暗示をかけるくらいなら、ふたりで楽勝だ。・・・ということで、刹那。好きにしていいよ? 僕もニールが動けないほうが安心。」