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1ミリグラム、メンソール

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 袖口から見える手首に太い筋が浮き、男くさい時計が巻きついている。中指と薬指の間に挟んで煙草を吸っているせいで、栄口はどこか考え事をしているように見受けられた。自分と同じ年なはずなのに、栄口の仕草はとても大人びている。
「変わりました、ね」
「え?」
「高校のときと比べて」
 煙草を持った手で相手を示すと、話の内容をようやく理解したようで、栄口は、うーん、と唸った。
「オレが変わったというよりも、水谷……が変わっていないのでは」
「あれから?」
「そうそう、十年前と同じ……」
 言いかけて栄口は続けるのをやめた。精神年齢かな、と容易く予想がついて、水谷は悲しかった。多分正解なのだろう。少なくとも、相手の反応を見ないと自分から何も動けないという点では、何ら昔と変わっていない。
 腕の時計を見るなり、栄口は灰皿で煙草の火を消した。おそらく自分の休憩時間がもうすぐ終わるのだろう。
 あわてて声を掛けると、喫煙室を出て行く寸前の栄口が「はい?」と振り返る。
「前みたいにやらせてって言ったら、やらしてくれますか?」
 我ながら馬鹿な質問をしたものだ、と後悔した。けれど栄口は嫌な顔もせず、さっきと同じように、はは、と軽く笑った。
「どうですかね〜」
 手応えがあるのかないのか、よくわからない反応を残していったものだから、水谷は混乱した。栄口から貰ったきつい煙草の火は、手元にまだ残っている。
 そもそもこんなジャンキーな煙草、なんで栄口が吸っているんだろう。自動販売機で見たこともない。しかしこの十年のうちに、栄口がこの煙草を手にする契機と、吸い続ける理由があったわけだ。
 そう詮索しだすと、今まで全く無かったのにもかかわらず、栄口への執着心が、わっと水谷の中を満たすのだった。