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だぶるおー こらぼでほすととりぷる

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突然に、手に職をつけたい、と、アレルヤが言い出した。
「僕、今まで戦う以外のことをしていないから、職業の種類もよくわかんないんだ。だから、いろいろと体験してみて、自分に合うものを探したい。」
「そうだよなあ。別に、わざわざ夜の仕事をする必要もないよなあ。」
 すでに、組織に居残り確定のライルは、うんうんと頷く。組織から、一旦、離脱するなら新しい仕事を探さなければならない。アレルヤは、まだ若いので当面は肉体労働的なことでもいいだろうが、これから先ずっと、ということになるのなら、何かしら専門的なものがあったほうがいい。
「だが、何もわからないでは働けない。社会常識や一般マナーを身につけるほうが先決ではないのか? アレルヤ。」
 一応、組織居残り組というか、ヴェーダ本体になっちゃったというか、そんなわけで究極のニートになったティエリアが、もっともなことを言う。実際、『吉祥富貴』で働いていたのも短期間だし、あまり、そういうものは身についていないのが実情だ。そんな人間が、いきなり外で働けるとは、到底、思えない。
「そういうことなら、どっか知り合いのところで、バイトさせてもらったら、どうだ? うちの店のスタッフなら、いろいろな繋がりもあるだろうからさ。ついでに、刹那も、そうするか? 」
 最終的に、ニールが、そう提案する。ついでに、刹那にも社会勉強させようという魂胆が、見え見えではある。
「俺は、『吉祥富貴』でいい。」
「ちょっと、兄さん。刹那はいいんだよ。俺が食わせるから働かなくていいのっっ。刹那は、このままでいいんだ。」
「・・・・ライル・・・・おまえな、そうやって過保護にしすぎると、刹那の社会性がなくなっちまうだろ? 組織の仕事はあるだろうけどさ、外界との接触だって重要だ。できたら、俺は、大学でも行かせたいところだぞ? 」
「大学? あんたさ、なんでそう、人を大学に行かせたがるの? 俺という失敗例を作っても、それを言う? 」
 過去、ニールが仕送りして、それを元にしてライルは進学した。ちゃんとした大学から一流商社へ就職したはずなのだが、どこでどう間違ったか、こうなっている。それを、本人は『失敗』 と言うのだ。
「失敗って言うなっっ。」
「だって、俺、兄さんが望むいい弟じゃいられなかったもん。失敗だよ。」
「おまえが考えて決めたんだから、それでいいんだよ。別に、失敗なんて思ってない。でも、大学生活っていうのは、時間もあるし、いろんな人間とも会えるだろ? そういう環境って大事じゃないか? 」
「ニール、俺は、カレッジ卒業年齢を迎えているので、それは無理だ。」
 冷静に、刹那は、それをツッコむ。この保護者、いつまでたっても、自分のことを子供だと誤解している。すでに、22を超えているので、卒業年齢に達しているということが、頭から抜け落ちているのだ。
「別に、年なんて関係ないんだ。カレッジがイヤなら、専門学校とか、アカデミーとか、そういうのもあるぞ? 」
 そうじゃなくて、今は、アレルヤのことだろう、と、刹那に冷静にツッコまれて、ニールも、ちょっと頬を歪めた。確かに、今は、アレルヤの希望についての話合いだったから、脱線を修正する。
「僕は、実践がいいよ? ニール。」
「うん、そうだよな。ちょっと、トダカさんに聞いてみるよ。」
 店の責任者で、ニールの親代わりもしてくれているトダカになら、相談しやすい。それに、誰がどんなコネクションを持っているかも、判っているだろう。




「そういうことなら、私の知り合いが、ちょうどバイトを探しているんだが、そこへ行ってみるかい? ケーキショップなんだが、イートインもやっているので、そちらのホール係を募集しているんだ。」
 期間は、最長二年だという。というのも、そこの若いパティシィエ兼ホール係が、フランスへ修行に出ているから、その期間だけ限定ということらしい。
「ケーキ屋ですか? 」
「ああ、ケーキ屋だ。午後二時開店、深夜二時閉店という変則的な店なんだが、これなら、きみの生活と時間帯も同じでいいんじゃないか? 」
 そういう意味では有難い。ホストクラブで働いているニールでは、普通の勤めを始めてたアレルヤと時間が合わなくなる。朝出勤して夕方帰宅なんてことになると、まるっきり逆転してしまって会話もままならないなんてことになるからだ。
「わかりました。アレルヤに話してみます。」
「ああ、彼が、そこでいいなら面接してくれるように頼むことにしよう。」
 トダカの話に、アレルヤも、ふたつ返事で頷いた。今までの生活時間と大差ないし、夜の仕事のニールたちとも時間が合わせられるので、願ったり叶ったりだ。
 それなら、すぐに面接してもらおう、ということになって、話はトントン拍子に進んだ。




 閑静な住宅街の中にある西洋骨董洋菓子店「アンティーク」では、翌日の仕込みをしている小野が、ほおっと息を吐き出した。約二年のフランス修行に、弟子の神田エイジが出発したのは、一ヶ月前だ。まだ、落ち着いていないのか便りもない。便りのないのは元気な証拠、と、橘はのたまっているが、気にはしている。携帯番号とメールアドレス、それから、店の名刺を渡していたのは知っている。「小野が心配するから、ちゃんと定期的に連絡しろ。」 とか、怒鳴っていたが、あれは、橘本人が心配しているのだ。
「どうしました? 小野さん。」
 ぼんやりと窓の外を無意識に眺めていたらしい。注文をとってきた千影の声で、はっと意識を戻す。
「なんでもありませんよ、千影さん。新作ですか? 」
「はい、新作をふたつです。」
 平日の昼間は、比較的暇な時間だ。イートインの客も、のんびりと時間を食うので客の回転は悪いが、この時間が小野には休憩と翌日の仕込みの時間になっている。今月の新作は出だしも好調で、女性客には人気が高い。イートインといえ、ケーキだけをただ皿に盛るような素っ気無いことはしない。せっかくなら、一手間というのが小野の考え方で、イートインでは、ケーキと、さらに、何かしらの飾りがつく。アイスやソルベなんかが定番で、これも女性客には嬉しいサービスである。注文のあった新作を、皿に載せ飾りつけをする間に、千影が飲み物を作る。先に飲み物を運び、それが冷めないうちにケーキを運ぶ。
 はい、と、小野が差し出したふたつの皿を手にして千影がホールに消えると、入れ替わりに橘が入ってきた。
「おい、小野。夕方、バイトの面接するからな。」
「ああ、うん。でも、橘、雇うのはきみなんだから、僕の意見なんて・・・・」
 別に、どうでもいいんじゃないの? と、言いたかったのだが、そこまで言わせてもらえなかった。ぎろっと橘は、小野を睨みつけて、「誰かさんの好みだったら、千影が泣くことになんだろうがっっ。てめぇーの好みかどうかが一番大事なんだよっっ。わかれよ、そこんとこっっ。」 と、一応、ホールの客がいるので遠慮がちの声で怒鳴られた。
「・・・・そういうことか・・・・」
「そういうこと。とりあえず、俺としては、千影より鈍くさくなくて、顔がそこそこなら、それでいいわけだ。」