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手の中のキラキラ

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たった今死にそうな顔をした親友から聞き出した事の顛末は、同じくらい悲壮な顔をさせるに十分なものだった。

何だそのBL展開。

「それで、お前あの性格悪男と付き合う訳?」

「お、俺、円田と付き合うの?!」

「責任とるって言ったんだろ?」

「そ、そんなつもりじゃ、お、俺、T郎ー、どうしよー?!」

「っていうか、お前彼女いただろ」

今までもゆうたに迫る女どもを撃退してきた戦歴を持つあいならば、あんなチビ一人どうとでもしてくれるのではないのか。

「あいには言ったよ!でも、そしたらなんか、顔真っ赤にしてキャーキャー言って、最終的には、頑張って!ずっと見守ってるから!って」

「え、じゃ、お前振られたの?」

「え!俺あいに振られたの?!」

「いや、彼氏と他の男との関係を応援するって、身を引くってことじゃねえの?」

「えー!!そんなあ」

ぴんぽーん!

突如鳴り響いた訪問者を告げる音に、何故かゆうたはびくりと身を震わす。

「T郎!俺いないって、」

「ちわーす!上がらせてもらうぜー!ゆうたいるよなー?」

「は?何、お前勝手に上がってきてんの?!」

「呑気に待ってたら、お前ゆうた隠すだろ。ゆうた、俺ほっといて浮気とか信じらんねー、後でお仕置きな♪」

「え、ち、違うよ!T郎は親友だって言ってんじゃん!」

「じゃあ、なんで俺放って先帰ったりしたの」

「円田いつも伯方と帰るじゃん!俺がT郎と帰るのもいつものことだろ!」

「責任とるんだろー、俺、は、ちゃんと待ってたし。っつー訳で、ほらこんなヲタクん家いないで、とっとと行くぞ。俺ん家と、お前ん家どっちがいー?」

「お、俺の家はダメー!!」

「じゃ、俺ん家な。ほら、さっさと行くぜ」

「T郎ー!」

だらだらと汗を流しながら、親友が天敵に引きずられていく様を呆然と見つめていたT郎は、親友の哀れな声に我に返った。

「ゆうたー!」

しかし、

「また、明日な!」

親友の後ろから、すごい顔でガンつけているドSと戦うだけ気力は、かよわいヲタクにはなかった。

「えええーーーーー?!」

「おう!じゃあなー」

途端にいい顔でゆうたを引っ張っていく円田と、蒼白な顔をして引っ張られていく親友を見送る。

(ゆうた…何されるんだろう…)

お仕置きって何だ。あのサド男はピュアハートな親友に何をするつもりだ。

(彼女とキスさえできないような繊細な男だ…。強制的に大人の階段を登ってしまったら…)

だが、あんな性格破綻男でも、宇野やT郎に対するような暴力的な行為、ゆうたの外見が少しでも損なわれるようなことはしないだろう。精神的被害は計り知れないかも知れないが。

罪悪感で心が痛む。しかし、今回ばかりは、T郎にできることは何もなかった。

(お前がBLの仲間入りをしようとも、俺はいつまでもお前の親友だからな!)

どこか遠くで、はくじょうものー!と叫ぶ誰かの声が聞こえた気がしたが、あくまで気のせいだと思うことにし、T郎は、ゆうたとやりかけていたエロゲーの攻略を再開したのだった。




別にホモってわけじゃない。

最初はテンパッた失言にかこつけて、T郎や宇野ばかりにかまける友人へのちょっとした嫌がらせをしてやるだけのつもりだった。

ただ、公然とゆうたを独占できるこの状況がだんだん楽しくなってきたのも事実。

そして、

「ま、円田?」

恐る恐る上目遣いで見てくるゆうたの様子が、あまりにも円田の好みすぎた。

「あの、さ、手…」

「なんだよ。はっきり言えよ」

「っ、手!いつまで繋いでるの…」

これくらいで、赤くなる美貌とか、ぼそぼそ苦情を申し立てる澄んだ声とか、無理に振り払うこともできずにされるがままになっているとことか。

全部が全部、相変わらずきらきらしていることとか。

(あー、冗談じゃ済まなくなりそ…)

(でも)

「嫌?」

「い、嫌ってわけじゃ、ないけど…」

「なら、いいじゃん」

(そう)

「このままで」

だって、気分が良くてたまらないんだ。

このきらきらが手の中にあるかぎり。

(離してなんかやらない)

(やっと、手に入れた)

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独占欲強い最低な男に捕まった。
作品名:手の中のキラキラ 作家名:川野礼