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ところにより吹雪になるでしょう

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 日が沈み、あとはただ夜になるだけの雪の街を歩く人は少ない。薄暗い道で、前を歩く人もすれ違う人もいないことを確認すると、栄口は誰にも聞こえないような小声でその歌をで口ずさんでみたが、喉が苦しくなって一フレーズ歌いきれなった。熱の集まる目元へ雪が落ち、堪らず涙をぬぐった。何を泣きそうになっているんだろう、自分で選んだ未来なのに。吐き出した呼吸は白く広がり、代わりに吸い込んだ冷たい空気が肺に痛い。
 誰もが自分のやり切れなさをどうにか乗り越え、新たな世界へと進んでいるのだ。寒い冬には暖かい春の訪れを望む。後輩も、元彼女も、阿部と同じ大学に通う水谷もきっとそういうふうに季節を過ごしているのだろう。
 けれど栄口は未だあの寒い日の公園に留まったままでいる。待ったとしても水谷は来ないけれど、自分に残っているものはもうそれしかないから、そこから動くことなんてできない。それとも長い間待ち続けたせいで身体が冷え切り、凍り付いて動かなくなってしまったのかもしれない。自らがそれを望んでもいないのなら、誰かにこの氷を溶かせるはずがない。
 後輩の言うとおり、不穏な風が雪を伴って辺りの視界を惑わす。突然吹きつけた強い風に栄口へ積もっていた白は払われ、そのそばからまた新しい雪が降りかかる。角を曲がると住んでいるアパートがすぐ先にある。それにしても寒い、今日は暖かいものを食べたいけど何があったっけな、と部屋の冷蔵庫の中へ考えを巡らせてすぐにくしゃみが出た。雪を避けて意外と大きく路地に響き渡ったその音に、栄口は自分がひどく一人であることを悟った。おそらくこれからもすべてを保留にしたまま不器用にしか生きられないのだろう。紺色を掻き乱しながら吹雪はもうそこまで来ている。