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ところにより吹雪になるでしょう

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 最初の大きな試験が終わった頃、栄口はとうとう耐え切れなくなって水谷へ告白しようと考えた。
 あのCDに日時と待ち合わせ場所を記した紙を忍ばせ、水谷へ返した。目的と自分の名前は書かなかった。そういうふうに気づかれにくい方法を使ったのには二つほど理由があった。
 水谷が栄口から返されたCDを開ける開けない、歌詞カードの中に挟んだ紙に気づく気づかない、その手紙を読む読まない、送り主が自分だと分かる分からない、夕方四時に公園へ来る来ない……。
 一つは、偶然やめぐり合わせに決断を委ねたかったからだった。すべてのチャンスが絡まり合い、水谷がここを訪れたのなら、伝えたいことを全て話せそうだった。
 しかしその大部分は、あらゆる逃げ場所を作ってからじゃないと栄口は行動できなかったのだった。だから直接的なメールや電話はとても無理だった。距離を取り、傷つくことなく一方的に失恋したかった。
 結果、水谷はいつもの公園に訪れなかった。そして、こんな中途半端な終わらせ方をしようとしたものだから、やっぱり失恋すら叶わなかった。
 真っ暗な公園でかじかむ手へ息を吹きかけながら、それでいい、と栄口は腹を決めた。好きだったというきれいな思い出が残ればそれだけで十分だろう。臆病者の自分で得られるものは、きっとこれだけしかない。
 今の栄口と水谷は、前のように友達同士と言っていいのかも定かではない。もし手紙を読んだ水谷が自らの意思で来ることを拒んだのなら、栄口から連絡を取るなんて絶対できなかった。高校生のときは困るくらいあった水谷からの電話もメールも、大学生になってからはぱったり途絶えてしまったことがすべてを表している。突きつけられたのは、受け止めなければいけないのは、拒絶だった。
 そうなってから栄口周りの水谷の情報は、時折阿部と連絡を取るときに聞く、ウゼーだのウルセーだのといった様子だけ。それでも水谷の今を知ると気持ちが暖かくなる救いようのない自分がいた。
 あのCDの中のあの曲は確か卒業シーズンに先行して発売されたラブソングだった。離れ離れになったとしても相手を想い続けていく、みたいな歌詞だったはずだ。続けて出されたアルバムを水谷は貸してくれた。オレはこれとこれも結構いいなって思うんだけど、やっぱりこの曲が一番好きだな、そう笑うとサビの部分を小さく歌った。ずっと栄口が好きだった、自分より少し低めのよく伸びる声だった。まだ忘れられない。