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吐きだめに犬

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 栄口の反応を確かめるのが怖くて顔上げれない! 今まで友達としか思ってなかった奴、しかも男に「好き」とか公言されても困る……ていうかキモいですよね! うんキモい! うっわどうしよオレ!
 ていうことはこの沈黙はあまりのオレのキモさに栄口が言葉を失っているに違いない! だから名前を呼ばれたって下を向いてるしかない! あごを掴まれて上を向かされても目を逸らすしかない! 栄口の顔が近づいて来ても……
 あれ? あれれ? なんか口と口が無理矢理くっついてるっぽい? ん? これって俗に言うきききキスなんじゃないでしょうか。えっ、えええっ!? なんで栄口がオレと?
「なにすんだよぉ、同情でそんなことされたってっ」
 言葉を遮って。また口がくっ付いた。多分今のはオレがギャーギャーうるさいから口封じのつもりだな! バーカバーカ! ばーかばー……か。うっ、たかがキスでみるみるうちに穏やかになる自分の単純さが情けねー。だってずっとしてもらいたかったんだよ、仕方ないじゃん!
「水谷はさ、オレがなんでドーナツ持ってここ来たかわかる?」
「今までどうもアリガトウ! のお礼なんだろ」
「違うよ」
「じゃあなんだよ、ダメだったんだ? ばーか!」
 また高ぶりだした感情をなだめるように、栄口は優しくオレの下唇を噛んだ。
「……栄口、ちゅーすればオレはおとなしくなるとか思ってるんだろ」
「……少しだけ」
「じゃあもっとしろよバカー!」
 近寄ってきた胸元を思いっきり突き飛ばしてやろうとしたけど、泣いてるせいか思うように力が入らなくて、栄口の鎖骨らへんに手のひらは収まってしまった。
「やっぱやだ!」
 だってやっぱり嫌なんだよ。栄口の話の中でしか知らないし、顔も見たことがないけど、かわいいミキちゃんともしたんだろ? そういうのはなんかヤダ。変なわがままだってわかってるけどヤなもんはヤだ。
「水谷はオレにどうして欲しいんだよ」
 栄口はぐずるオレにとうとう呆れてしまったようで、向かいで少し難しそうな面持ちでオレの言葉を待つ。別に何も、って言い逃れようとしたらあっさり嘘と見破られてしまった。
 だってさ、いくら日ごろから図々しい水谷で通っていようとも『ミキちゃんと別れてオレとつきあって』なんて言えないよねー。「言うだけ言ってみな」ってそんな、わがままにだって程度ってものがあるよねー。栄口の中でのオレって今どのへんに位置してるのかわかんないけど、これ以上変なことして嫌われるのは避けたいんだよねー。
「じゃあ、オレを二番目にしてください」
「……はぁ?」
「ミキちゃんの次でいいから、彼女にしてください」
 おかしなことを言ってるって自分でも十分承知の上、少しだけ正直になってみる。栄口はもっと眉間にしわを寄せ、オレの顔をじっと見つめてくるからちょっとたじろいだ。
「彼女ってなんかおかしくない?」
「え? 彼女じゃないの? あれ? 彼氏?」
「水谷もオレも彼氏なのか?」
 突っ込むのはそのへんじゃないよ! 栄口! ていうか肝心なところがあさっての方向へ流れていっちゃう!
「うう、とにかく二番目でいいんで、そばにおいてくれると嬉しいです」
「それだけでいいの?」
「時々今みたいにキスとかしてくれるともっといいです」
「それだけでいいの?」
「ギャー! 何言わさせる気だ栄口のあほ!」
 焦る気持ちにまかせて振り上げた右手は栄口にあっさり止められた。手首を掴む指が強くて熱くて思わず正面を見たら、栄口はなぜかふてくされた。そんな顔、今まであんまり見たことなかったからなんだかドキドキするんですけど。
 今度はオレから唇を近づけてみた。栄口は逃げたりしなかったけど、目は閉じてくれなかったし、しかもその目が下を向いたまま、絶対オレのほうを見ないのが妙にムカついた。
「……舌入れんなよ」
「えー?」
 何食わぬ顔でしらを切ったオレをたしなめるように叩き、ふっ、頬を緩めた栄口がすごくかっこよかった。惚れ直すってきっとこういうことを言うんだな!
 しかし栄口はオレなんかに好かれて本当にかわいそうだな! だってオレは見た目とは違って結構一途なんだもん。栄口が全力で嫌ってくれないかぎり、ずっと、ずーっと隣にいてやるぜ。



 こうしてオレはかなりなし崩しに栄口の二番目になれたわけだけど、そのあとのいろいろはまた今度の話。

































































































作品名:吐きだめに犬 作家名:さはら