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その唇で蝕んで

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※来神時代
※臨(→)←静




喉が渇いたから飲み物を買いに自販機のある玄関に行ったそこで、正しくばったり、彼と会った。

「やあ」

予想外だったな。こんなに偶然、本当に偶然シズちゃんに会うなんて。
しかも今日は俺の誕生日、最悪だ。つくづく運に見放されている。若しくは神様とやらに嫌われているのかもしれない。

出会って早々喧嘩という生易しいものでは済まない殺し合いを始めてから、もう二年半。
二回の進級をして三年になった今でも俺たちのその意味のわからない関係は続いていた。

お互いを見つければ、どっちかが必ず追いかけた。

「手前…」
「おっと、ここで暴れないでくれよ?俺はただ喉が渇いたからそこの自販機に用があるだけで、別にシズちゃんと喧嘩しにきたわけじゃない」

今はね。
俺の言葉を聞いたまま黙っているシズちゃん。
よくわからないが、好都合だ。

彼の横を通りぬけて自販機に小銭を入れると迷わず一番右下のボタンを押す。
取りだし口からお気に入りのカフェオレを取りだすと早速ストローを挿した。

ごくごく。喉を鳴らして啜る。口の中がミルクとコーヒーで満たされたところでズズッという音がして啜り具合が悪くなる。
おいしかった。中身のなくなったパックをゴミ箱に投げ捨てて、教室に戻ろうとして気づく。

「…シズちゃん、まだいたんだ」

後ろを振り向くとさっき会ったときと同じ位置に彼はいた。
ただ違うのは、彼の体が自販機側の俺を向いていること。

シズちゃんが黙って俺を見てるだけなんて、それこそ新羅のよく言う天変地異の前触れじゃないかな?

今日は大人しい方だけど、そろそろ仕掛けてくる頃か。
後ろ手に折りたたみのナイフを準備して、ゆっくりと近づいた。

作品名:その唇で蝕んで 作家名:煉@切れ痔