Love little and love long.
「ホント、この癖治さないと…」
この変な癖の所為でもう散々だ。もう失いたくはないのに、自分から手離してしまった。
夢と現実の区別が付けられないばかりに一番大切な人を失ってしまった。
「帝人君、」
夢の中の彼女は怒っていた。けれど現実での彼女は泣いた。夢は結局夢であった。彼女の涙に心痛む自分がいながらも本能に従った。そんな自分勝手は馬に蹴られて死ねばいいのかもしれない、と思いながら盛大に溜め息を吐いた。
ヤキモチ作戦は成功したかもしれない。けれどそれで得たものよりも失ったものの方が大きい。
大誤算だ。情報屋の名が聞いて呆れてしまう。情報屋が情報に惑わされて自滅するなんて。情けない、いや、自分だけならまだいいが彼女を傷つけたとあっては今まで彼女に好意を寄せて自分を敵視してた奴等には好機だろう。
こう暢気に一人、感傷に浸っている場合ではないことはわかっている、わかっているんだ。
けれど、人は臆病なもので一度失った感覚を再び味わうことに恐怖を感じてしまう。
…でも、失ったままではいられない、取り戻しに行かなければ。
「帝人君、ごめんね」
力無く投げ出していた四股に力を込めて立ち上がる。
同時に彼女へ謝罪を口にして、彼女が出て行ったドアに駆ける。
此処は現実だ。夢は夢のままで終わらせなければならない。
もう一度、彼女をこの腕に取り戻したい。自己満足の行動だとはわかっているけれど、どうしても諦められないのだ。俺にとっては寝ても覚めても帝人君のことにしか興味がない。彼女だけなんだ、俺をこんなにも必死にさせる少女。
傷つけてしまったけれど、とても大切な。
俺の世界でたった一人のお嫁さん。
だから、ごめん。
「愛してるんだ、帝人君」
fin.
作品名:Love little and love long. 作家名:煉@切れ痔