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なつおみはる
なつおみはる
novelistID. 23650
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for myself

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平和、とはまだまだいえはしないが、オーブの情勢は安定しつつある。これも戦争が停戦し、プラント代表のラクスが統率力からオーブに便宜を図り、諸外国に気を配るカガリの機転の効果のあらわれだ。それでもまだまだ。二十歳にも近くなった今ならわかるが、壊したものを再生するには何十年もかかる。コズミック・イラ以前の地球は温暖化現象で環境汚染もひどかったらしい…。あれから何百年、海面の上昇はないらしいし砂漠も広がっていない。宇宙に出た人間と地球の人間と人口のバランスがとれて地球の汚染状態が回復したのだろう。そうして宇宙に出た人間は、皮肉にも新しい技術の一つとして、コーディネーターを作った…。
 平和って何かはわからない。どんな形なのか本当になってみないとわからないけど、幼い頃のプラントの状態を言うのか?カガリは平和を知ってる。でも、オーブの平和は「いささか平和ボケ」だってフラガ大佐、言っていたかな?
 部屋に忍び込んできたカガリはこう言った。
「平和の捉え方は人それぞれ違うが…」
忍び込む、というのは聞こえが悪いが、一応オーブ代表とオーブ軍准将の立場から公に二人で会うのは控えている。それぞれの道を行く、今でもそのスタンスはお互い変えていない。ディスティニー計画破綻の後もカガリは指輪をはめていないが…。強がったり(突っかかったりし始めると大変だが)頼ってくるカガリもかわいいと思ってた。でも、「何かする」と決めたカガリはとてもきれいだと思った。
「どうした?カガリ」
「いや、まあ、いいんだ」
…遠くから見るより、近いほうがいいと正直思う。それは俺がカガリの体温を知っているからだ。ただし、いつも近くに、というわけにはいかない。遠くで志気を揚げる彼女に慣れ、なれつつある。
「ちょっと顔見たくなった、それだけ」
「ん?…あ、そうか」
付き合い始めみたいなこころ踊る雰囲気はない。でも信用されてる心地よい沈黙が続いた。
「…お前、元気か?」
尋ねられて、ん?と思う。毎日視線は交わす。わかるはずだ。
カガリが「元気?」と尋ねた意図がわからない。
彼女自身の気持ちが落ちているときと俺は推察した。今日はオーブ西部被災地の訪問と地球連邦政府との国交閣議だった。
「…何かあったのか?」
まさか連邦政府に何か言われたとか、物別れとか?そんな情報はないが…。
「…いや、さ、これ…」
差し出した手のひら。内側に小さく光るものがあった。
「これは…」
見たことがある。俺が首にかけている。
「くれたんだ、被災地の子どもが」
「…」
ハウメアの守り石と同じ桃色のそれ。原石なのだろう。不器用にごつごつ鈍く光っていた。
「そのこ、母親、いないって、死んだんだって言ってた。…で、いろいろまた考えたし、お前を思い出したんだ。ごめん、こんなんで来るなんて」
そうか。元気なかったのはいろいろ思い出したからか。
「…そうか…」
「そいつ、聞いたら12歳なんだ。反骨精神がすごくってさ、やってもやり返さないって、死にそうな人みんな救ってみせるって言ってた。シンとは違う強さがあって、言葉出なかったんだ」
「そうか」
俺はシンを思い出した。今あいつは軍人とは違う方向を向いているはずだ。少し微笑ましくなった。同時に、カガリの、君の、少しも変わっていない優しさを思ってどうにかしたくなった。
きっと、これからもこんなことはたくさんある。もし何十年後、戦争がなくなっても平和を維持することのほうがはるかに難しい。上に立てば矢面になることだって…彼女の感受性が必要以上に自身を傷つけないとも限らない。どうにかしたくなる心を抑えて、
「…どうしたい?」
俺は聞いてみた。確認だ。カガリの感情でいっぱいの頭の中、整理させよう。それでも君はやっていかなくちゃならないんだと、わかっているだろう?
「…アスラン」
俺は笑ってみせた。君の優しさ、知っているよ。それで救われたんだから。そしてそうやって余計なことも思い出させるかもしれない俺のこと、大事に思っていること。
昔だったら、泣き虫で飛びついて来ただろう彼女も落ち着いてる。一呼吸置いてる。
こうやって歳を重ねて落ち着いても君を大事にしたいのだと俺は思う。
先の戦争で「守りたい」って本気で思って、理屈を越えてあんなふうにキスもできるんだ。…父も母とこんな触れ合う温かさを知っていた、そして父は母を大事に思っていたから暴走したんだと、カガリと初めて過ごした夜に考えたんだ。そして、父がよくわかったんだ。一度、父の負の一面が自分の世界を揺るがせたけど、自分の存在を認めてほしいと願ったけれど。君を苦しませたけど。
「カガリ、明日はゆっくりできるな?」
今は今ある自分を大事にしよう。カガリが大事に思う自分を大事にしよう。
「今日は一緒にいよう」

 出会った頃は、インテリジェンス高そうな生意気な奴だって思っていた。年甲斐にもなく冷静だし、お前呼ばわりだ。けど、いい奴だった。アスランに比べ、私は何も知らない、バカだったし、今もそうだ。父上がこの傷つきっぱなしのオーブを見たら、なんと言うだろう。
「あったかい、アスラン」
私は頼りっぱなしだった。アスランはほんと、頼りになる。でもそれはただの依存だった。アスランが自分自身を知ろうと離れた時、正直、ショックだったのだ。そんなショックを受けてる自分は、自分のことばかりだった…。ため息が漏れる。
「…カガリ、ちゃんと食べてるか?」
「あ?きゃあっ」
脇腹に温かい手を回された。びっくりして体がはねた。くすぐったい。
「あ、ごめん」
一瞬、手が離れた。悪いと思っているのだろう。でも体は密着したままだ。
「あ、いや…私もごめん、声あげて」
「あ、いや、大丈夫」
ベッドに潜り込むときはダウンライトは点けない。私はこんな時アスランの顔を見ることができない。アスランもそうだ(と思う)。暗くてよくわからない。アスランは行動で示してくる。でも、声に出して「一緒にいよう」とかはなかった。
初めての時はどちらからとも言わずそういう雰囲気になったのだ。父の残した仕事の大きさについていけなくなって自分でさばいていく手立てもなくて落ち込んでいたときだった。あの時アスランは何か持ってきた。自分で作ったのだというハムスターの小さなロボットだ。励ますつもりだったに違いない。こんなことしかできないが…と言っていた。
こんなことしか…って。笑ってしまう。その後、ハムロボットがきっかけで、夜を過ごすことになったことをアスランはどう考えているんだろう?
 相変わらずの、壊れ物を扱うような、それでいてどう扱っていいのかわからないような乱暴なアスランの手つきに身をゆだねた。気持ちいい。
「久しぶりで」
「え?」
「ちょっと困っている…」
「…」
 キラとラクスのように、誰がみてもカップルな振る舞いはさすができない。私もアスランもそんな性格だ。笑みがこぼれた。
「私も困っているよ、お前だけじゃない」
作品名:for myself 作家名:なつおみはる