ロング・アイランド・アイスティー
少しでも打ち解けようとしただけなのに何で手を出す事になるのか。
それも全然酔ってないってところに問題がある。
それにしても相棒のの動向がやけに大人しい。
怒りに我を忘れすぎてかたまってるのか?
恐る恐る彼を振り返ると眼は閉じたままで。
眠りに落ちているようだった。
「あれ、バニーちゃん?」
そっと覗きこむと規則的な寝息が聞こえた。
「なんだよ…もう〜〜〜。」
がくりと項垂れて一気に疲れが押し寄せて来た。
徹底的に嫌われる手前だったと言うのに残念なようなほっとしたような複雑な心境で。
酒が抜けた後の体温低下で風邪などひかないように寝室から毛布を探して持ってきて掛けてやる。
起きる気配のない事をいいことにおでこにキスをひとつ落として。
「おやすみ、バニー。いい夢を。」
結局何しに行ったのか。
いうなれば確実に何かの種が芽吹いてしまったのは確か。
拾った欠片は宝石のように輝いて、鋭利なものだった。
流石に虎徹と言えど散らかしたままここを出る訳にもいかなかったのか、ある程度片付けて残り物は冷蔵庫へぶち込んで。
虎徹なりに極力大きい音は出さないように気を遣いつついろんな所にぶつかって。
そそくさとその場を後にした。
そうして最後にドアの閉まる音を聞いて数分。
バーナビーはのそりとソファーから起き上がる。
「・・・まったく甘いんですよ、おじさんは。」
あれくらいの酒で酔う訳ないじゃないですか。
心の中で呟いて。
自嘲の笑みを浮かべる。
ぶん殴るとか、蹴りくらわすとか拒否する隙はいくらでもあったけれど。
ため息をついて寝室へ向かう。
自分で自分が分からないなんて一番嫌なパターン。
何に付けてもあのおじさんに調子がくるってばかりだ。
キッチンには飲みかけのロング・アイランド・アイスティーが飲み干されるのを待っていた。
薄くなってまずいだろうその液体を一気に流し込んで眠りに付く。
毛布にくるまり、先ほどまでの事を夢の中での出来事にするために。
END
作品名:ロング・アイランド・アイスティー 作家名:藤重