5月は恋の季節
5月は恋の季節
ことの始まりはゴールデンウィークを前にした飲み会だった。
いつも馬鹿騒ぎをする悪友たちとの場に、今回は彼らの知り合いが参加するという。
盛り上がること・楽しいことが大好き、という共通点でがっちり繋がったフランシス、ギルベルト・アントーニョの三人は、ことあるごとに飲んで食べて騒いでいた。大学生の、やりくりすれば自由な時間が豊富にあるというのは素晴らしい。
「俺様の可愛い弟が入学してきたからな!」
「親分も従兄弟の片割れがうちんとこに入学してきたんよー」
「へえーそうなんだ。じゃ、今度一緒に飲み会でもしようか? あ、でもその子たちはまだジュースだねえ」
「ま、お子様はジュースでいいだろ! あ、あともう一人、つるんでる奴が一緒に来るからよ」
ふーん、とフランシスは頷いて、飲み会兼ブラコン披露会は設定されたのだった。
ギルベルトの弟であるルートヴィッヒと、アントーニョの従兄弟で双子のロマーノとフェリシアーノ(入学してきたのはフェリシアーノの方らしい)に関しては、頻繁に噂を聞いていたので知っていたが、もう一人については本田菊という名前の男でギルベルトの既知の相手であることくらいしか知らなかった。基本的にフランシスは男に関して興味をもつことはない。
「あ! きたきたー! おーいこっちこっちー!」
当日の待ち合わせ場所にいたのは、本当にギルベルトと血の繋がりがあるのか疑うほど生真面目そうで長身のルートヴィッヒ、のほほんとした柔らかな雰囲気でぶんぶんと手を振っているフェリシアーノ、そして地味で優等生タイプの本田であった。
バラバラな雰囲気のこの三人は、入学してすぐ仲良くなったのだという。
よく喋るフェリシアーノはぽわぽわとそんなことを言いながら軽い足取りで前を歩き、彼がふらふらと寄り道しそうになるのをルートヴィッヒが怒り、それを本田がなだめるという役回りらしい。
一見不揃いながらバランスのとれた三人なんだな、とフランシスは観察を終了した。不意に本田がフランシスを振り向き、会釈する。見ていたことに気付かれたのか、とどきりとしてフランシスは手を振ってやった。