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鈴鳴の秘宝 第三章 離苦

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Episode.13 束の間の休息



うろうろとエステルは蜂のように8の字を描きながら自宅にいた。
自分達は部屋を前に借りてあったので今回もその時のことで借りることが出来た。
だが、アガットやシェラ、ティータはホテルに泊まっていた。当然、経費で落ちてはいるのだが。
「そんなにレンが心配かい?」
「…そりゃレンが子どもじゃないってのは分かってる。でもソフィアさん達に会わないかが心配で」
ヨシュアは不安げな顔をするエステルを抱きしめて頭を撫でた。
「大丈夫。レンは知ってるんだから。それに、支援課の人達だっているじゃないか」
「…うん」
二人がそんな会話をしていると、部屋の扉がノックされる音がして、エステルは扉を開けた。
「あ……」

「はわわ…」
目の前に広がるのは、自分にとって未知のものだった。
「す、すごいですアガットさん!すごいんですよ!!」
「だから落ち着けっての」
「あうぅ…」
しょんぼりとした風に首を下に向けるティータ。
ふとアガットの脳裏に出発前のとある女性の言葉が思い出された。
『ティータを泣かせたら!契約不履行!そして死罪!!』
契約不履行はともかく。
「……」
嫌な汗が流れるのを感じながら、アガットはティータのいた所を見る。
気づいたらいない。
「…は?」
「なるほど…ある程度は予想してましたけど」
「彼女…さすがはラッセル博士の孫だな」
「!?」
アガットの眼前にはティータが努力ネットワークの端末を扱っている姿があった。
「何なんだ…この光景」

「うわああ!この女強い!!」
「遊撃士なのに何でこんな所に…」
「あら。今日は待機中なのよ?それに…」
言いながらチップをベットする。
「こういった所にいる市民の方と交流するのもいいでしょう?」
ウィンクをして、彼女は2枚、カードを交換した。
「あら、いい手」
「(本当か…?いや、はったりという可能性もある。ここは勝負だ。俺の手は弱くはない)」
「いかがなさいますか?」
「レイズ!」
シェラザードは首を横に振る。
「貰ったぁ!!」
ストレートフラッシュ。
対する彼女は
「言ったでしょう?いい手だって」
「!?」
ロイヤルストレートフラッシュ。
その瞬間、シェラザードのテーブルは歓喜に包まれた。

「えーと…レンちゃん?」
「どうかしたの?お兄さん」
端末の前に座るレンの姿。
「…ああ、ここはあの子の特等席というわけね?」
「いや、別に気にする必要はないんだけど…」
「もういいわよ。ティータにも少し挨拶したし」
「ティータちゃん…?」
アガットとティータは今日…
「まさか…」
「ふふっ。じゃあレンは手配魔獣を倒してくるわ。何かあったらよろしくね?」
言いながら、彼女は外に出る。
「ツァイト、付いて行ってやってくれ」
ただの子どもでないのは分かっている。だが、彼女はまだ幼い。
だからこそツァイトを付けて有事に備えてもらう。
その点を分かっていたのだろう、ツァイトは普通に付いて行った。やや目立つが仕方があるまい。
「さて…俺は市内の支援要請…」

―――…りぃん

「また…?」
意識が遠のく。
「くっ…」
「ロイドさん!!」
背後からの声に、ロイドの意識は急速に現実に戻った。
「あれ、ティオ寝てたんじゃ…」
「否が応でも起きますよ。あの人達が来たのでは」
「あの人達…?」
「ロイド君大丈夫!?」
「鈴の音…まさかあれがアーティファクトだというんですか?」
「人心操作なんてアーティファクトじゃ不思議でもないやろ」
「鈴の音ではなく、鈴がアーティファクトなのですが」
エステル、ヨシュアにケビン、リース。
「びっくりしたよー…あたし達が声かけても全然反応しないし…」
「ロイド君、まさかティオちゃんに気があるん?」
「…オーバルドライバー、出力最大…」
どこからともなく出された魔導杖。それを変形させてエーテル・バスターを打とうとする。
「待て待て!そんな事したらここが壊れるだろ!?」
「…むぅ」
大人しく魔導杖を元に戻す。
「しゃ、洒落にならんわ…」
「次に言ったら、リースさんとは永遠にお別れですね」
「…ハイ」
「それで、あの…どうしたんですか?」
「昨日の爆発の件ですよ」
「爆発…?」
「まぁ、話すと長くなるんやけど」
そういいながら、ケビンは昨夜の顛末を話しだした。

作品名:鈴鳴の秘宝 第三章 離苦 作家名:桜桃