鈴鳴の秘宝 第三章 離苦
Episode.14 事の顛末
「しっかし妙にあっさりしとったな」
アーティファクトの入った小箱を持ち、ケビンがぼやく。
「……言われてみると」
外では遊撃士と支援課が魔獣と交戦中だ。それを考えると確かにあっさりし過ぎている。
「むしろ不自然なのかもしれないね」
「…?」
「クロスベルの下にはジオフロントが広がっているんでしょう。そこには魔獣が生息してる…なのに」
「罠やったっつー事か?」
言いながらケビンは素早くボウガンに矢をセットし振りかえりざまに撃つ。
「おでましかい…!」
「私が引きつけるからケビン、援護して!」
「言われなくても」
ケビンの手にあるのはエニグマではないそのひとつ前のバージョンだ。
念のため、まだ馴染んでいないエニグマとの両方を持ってきていたが、こういう時はどうしてもこっちを頼りたくなる。
「!待ってケビン!こいつ…!」
法剣をかまえ、敵に斬りかかろうとしていた彼女が叫ぶ。その声に気付き詠唱を止める。
そしてリースの目の前の魔獣の動きを見て、
「爆発する気か!」
すかさず星杯騎士団の紋章を出す。リースも動きに注意しつつステップを踏んでケビンの近くに来る。
「我が右手に在りし星の杯よ。天より授かりし輝きを持って、我らが盾となれ」
足元に輝く方陣が浮かび上がり、二人を包んだ。
「リース、あいつ下に落とせるか?」
「…厳しいかもしれない。どうして?」
「爆発が逃げる所は俺らが入ってきた所しかない。確実にあそこら辺一帯が吹っ飛ぶな」
「…っ…!」
「おい、リース!?」
「あとで市長さんの方に謝っておいて!」
言いながら壁を壊す。その瓦礫で爆発しようとしている敵を押しつぶす。
「っておい!謝るって言うより賠償やないか!!」
「市民の人に被害が出るよりはマシ…!」
「いや、確かにそうなんやけど!」
そんな会話をしていると、辺りは爆風に包まれた。
作品名:鈴鳴の秘宝 第三章 離苦 作家名:桜桃