パスタの国の王子様
それからほどなくして、通路を塞いでいたキノコは何事もなかったかのように通常のサイズに戻った。仲間たちが見たものは、徐々に小さくなっていくアッシュの背中と、地面に膝をついてぼろぼろと大粒の涙をこぼすルークの姿だった。
子供のように泣きじゃくり、アッシュの名を呼び続けるルークに、一同は唖然となり、ただただ立ち尽くすことしかできなかった。
「……アッシュとケンカでもしたんですか?」
一番最初に我に返ったのは、やはりジェイドだった。
「違う、ケンカなんかしてない、俺が悪いから、俺のせいなんだ」
衣服の胸の部分をぎゅうと握り締める。いっそ心臓が止まってしまえばいいのに。
「……行こう、みんな。俺は、世界中の人を幸せにする。……アッシュもだ。ごめんなさいアッシュ、俺はお前を傷つけてばっかりで、役立たずの模造人形だ。でも、それでも、お前を幸せにしてやりたい」
その想いを、もう一度噛みしめる。
「……俺は、アッシュとしあわせになりたい」