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ジェストーナ
ジェストーナ
novelistID. 25425
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青色サヴァンと戯言遣い

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  心の中で伝えたいことをまとめてから、水野は慎重に返事を口にした。
  「確かに、コミュニケーションって一番最初は親から教わるものですからね。親が子供の優秀さを上回らなければ、そもそも『教える』ってことが成り立たない」
  「水野も頭いいなぁ。俺は難しいことはわかんないよ。って言うか、水野の感想が聞きたかったんだけど、まあいいか。これはこれで参考になったし」
  「え。あ……すみません」
  「気にすんなよ」
  徐々に冷えていくプリントの束に飽きたのか、根岸は廊下に直接プリントを置いた。コピー機は今も元気に稼働中だ。
  根岸は顔を上げて、にっこり笑った。まぶしいほどの笑顔だった。
  「なんていうかさ、こんなこと言ったけど、普通に両思いで問題ないよな。藤代的に言えばラブラブってやつ? ごはんは美味いほうがいいし、天気は晴れてるほうがいいし、ちゅーは上手なほうがいいし、さ。ぎゃー、今のなしなし! 恥ずかしい!」
  「中西先輩はキスが上手なんですか」
  「そりゃもう! 極上ってやつ!」
  「……あの、根岸先輩、今の俺の台詞じゃないんですが」
  「えっ? うわわわわわ中西!? いつから聞いてた!」
  振り向いた先には、コピー機に寄り掛かるようにして中西が立っていた。にやにやと、チェシャ猫のような笑みを浮かべている。
  よく見れば、この人は、ちっともアイツに似ていない。これっぽっちも似ていない。内側だってこの人の浮き世離れっぷりに比べたら、アイツなんて可愛いものだ。水野はそう思い直した。だから、あれは根岸なりの恋人自慢だったのだろう。水野は自分をそう納得させた。
  根岸は真っ赤になって中西のシャツをつかんで必死に苦しい言い訳を続けている。
  なんでもないを装ってちらりと中西を窺えば、中西は相変わらずチェシャ猫のような笑みだった。何を考えているのか、まったくもって読み取れない。よしよしと子供をあやすように根岸とたわむれている。
  (ああでも、中西先輩はキスが上手いのか)
  (それだったらシゲに似ていないこともないかもしれないな……)
  コピー機が、やがて、音を立てて止まった。中身を取り出して揃え、コピーした分をまとめながら、水野はふとそんなことを考えた。