ロックマンシリーズ詰め合わせ
02/秘めごと (ロックマンエグゼ・炎熱)
絶対に、言わないと決めたことがある。
一体どこで売ってんだソレ、という疑問は、口に出さない。
どうせオーダーメイドだろう。嫌味な奴。
というかなんでそんなのかけてんだよ?
確かに乱視気味、とは聞いたことあるけど、それが必要な場面とは思えないんですけど。
営業用のスカした顔も微笑も何度も見たことのあるものだけど、それがいつもの5倍くらいは気に入らない。
何だその格好。何だその顔。何なんだよお前。
「……ムカつく」
『ね、熱斗くん?』
と言うか、どこ行くんでも大抵は私服で通してるくせに。なに気取ってんだ。
本当なら、俺たちみたいのが着たら、おかしいはずなのに。もし俺が着ようもんなら、「七五三」とか言うに決まってんのに。
心底、本当に、気に入らない。イライラする。
『熱斗くん。ねえ、どうかしたの?』
「………………あーっくそ!!」
『熱斗くんっ!?』
振りかぶって第一球!
力いっぱい壁に投げつけた雑誌がべしゃっと情けない音を立てて、床に落ちる。ざまあみろ。
ベッドの上に仁王立ちになって、それでもムカムカが収まらなくて、俺はもう見えない雑誌の記事を睨みつけた。
ほとんど内容なんて分からない経済雑誌なんて手に取ったのは、他でもないあいつの口から聞いたタイトルだったからだ。
思わず買ってしまったのは、カラーページにあいつの姿を見つけたからだ。
それが、こんなに腹が立つなんて。
「……炎山のバーカ」
八つ当たりだって、分かってる。もし面と向かって言えば、呆れられて、それでも許されて受け入れられるのも、分かってる。
だけど、それが余計に腹が立つのだ。
見えなくたって、目に焼きついてしまったあいつの姿。
まるで大人みたいにスーツを着て、インテリぶって、眼鏡をかけて。
余裕の笑みでインタビューに答える副社長。
何だよ。何だよお前。
俺と同い年のくせに。けっこうガキっぽいとこ、あるくせに。
何で、俺には出来ない顔が、出来るんだよ。
(置いてくなよ)
思ったことは、死んだって口になんか、出さない。
置いてくっていうか、最初から、差があったのかもしれないけど。
そんなこと、教えてだって、やるもんか。
「―――決めた」
次に会ったら、もぎ取ってやる。俺の前でまで、澄ました顔なんか、させるものか。
遠くになんか……行かせてやるものか。
「ロックマン!」
『……何?』
「メール、お願い」
『はいはい。炎山くんにだね』
俺は、そんなお前なんか、知るもんか。せいぜいそうやって笑ってろ。
壁際でべしゃりと丸まったままの雑誌に、宣戦布告。
今に見てろ。あっと言う間に、追いついて、追い越してやる。
それから焦ったって、遅いんだからな。
作品名:ロックマンシリーズ詰め合わせ 作家名:物体もじ。