ロックマンシリーズ詰め合わせ
08/境界 (ロックマンX・ゼロ←エックス)
ときどき、自分たちに与えられた記号が、わずらわしくなる。
俺たちは、互いの存在ゆえに造られた。二人の人間と、彼らの生きる世界と、彼らの執着のために造られた。
あれから100年が経って、もうこの世に彼らはいない。そして俺たちだけが遺された。
だから、思ってしまうのも無理はないだろう。与えられた機能をもって、俺たちは俺たちとして在って良いのだと。
―――だけれど。
俺たちは、レプリロイド。造られた存在。それが消えることのない事実。
俺たちの中に刻印された、活動指針という造り主の意志が、俺を縛らないことは、ない。
ときどき、それがわずらわしくなる。
彼は、どうなのだろう。自分のように苦しんでいるのか、そうでないのか。
彼まで苦しむ必要もないだろうとも思うし、同じように苦しむのもいいと思う。
彼に与えられた存在意義まで含めて、俺が引き受けるなら、彼は、どんなふうに苦しむのだろう。
ときどき、わずらわしくなるのだ。俺たちの間に在って、いつまでも俺たちを定義し続ける、二人の老人たちの妄執が、厭わしくてならないのだ。
彼に与えられた記号は、消えない。俺が在る限り、けしてなくならない。
それなら、俺が、俺に与えられた記号を、消してしまえばいいのだろうか。
そうして、彼と同じ存在になってしまえば、望むすべてが手に入るのだろうか。
それで済むというのなら、きっと俺は、いくらでもそうするに違いないのに。
人間という。そのすべてを滅ぼして、俺たちを隔てるものなど、すべて消してしまうのに。
作品名:ロックマンシリーズ詰め合わせ 作家名:物体もじ。