神話の後
うか。
「俺はね、・・・・リョウスケが傍にいないのが、一番嫌なんだ、きっと。・・
・・俺に未来を教えた責任、取ってくれる?」
喜びで、胸が高鳴った。昔、懐中時計に納めていた許嫁の少女の写真を眺めてい
る時と同じ感覚だった。その記憶は、ここまで来るのに随分遠回りをして、その
分色々なものを失ってきたことも教える。けれど、全ての過去なくして今ここに
は居られない。カタシロは柔らかい笑みをたたえて、空いている方の手でレイジ
の手を取った。驚いた様子の彼と目が合う。
「・・・ああ。ちゃんと取るよ、トキオ」
校舎の向こうに向かって沈み、輝く夕陽を前に、二人は繋いだ手の温かさを暫く
確かめ合っていた。