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永遠に失われしもの 第11章

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 ローマ警察署の火事は発生から数時間たって、ようやく鎮火した。

 地下の留置場はおろか、建物一階も壊滅的
 で、二階も約半分以上は使い物にならない
 というくらい悲惨な状況ではあったが、
 辛うじてラウル刑事の凶悪犯罪課は
 無事であった。

 しかし警察署内は、この火事で大混乱を
 招き、ラウル刑事の姿が見当たらないこと
 については、誰一人気づきもしなかった。


 ラウル刑事は、カフェに入り、
 ドイツ陸軍秘密諜報部ディーデリッヒ大佐
 との通信係と、互いの背中を合わせるよう
 な席にすわり、エスプレッソを注文した。

 そして現在までの捜査状況を記した
 書類の入ったカバンと、
 代わりにオレイニク家関係の書類の入った
 カバンとを交換するように床に置いた。

 ラウル刑事は、小脇に抱えた新聞を広げ、
 背中合わせの通信係に話しかける。


「ロッジについて、
 何か情報をお持ちでしたら
 次のときにお渡しくださいと、
 お伝え願えますか?」
 

 通信係は、了解した旨を伝えるように、
 カップを指で軽くはじいて鳴らすと、
 無言のまま、カフェを出て行く。


 暫くして、ラウルもカフェを出て
 署にもどり、予想通りのオレイニク家の
 報告書を目の前にして、一人考えていた。


 ・・先代の公爵が心臓麻痺で死亡して
 以来、その執事、下男が次々に怪死。

 その上公爵家の別荘のある、
 ここイタリアのマントヴァでも、
 使用人一家が惨殺されている・・

 ミラノのホテルでは、先代公爵の弟、
 レオ・アウグスト・オレイニクにとって
 叔父カールも、滞在中に心臓発作を
 起こして死亡。

 しかもそれらは全部、先代公爵死後
 たった3日間の出来事だ・・

 既に、偶然の域をはるかに超えている・・
 
 
 死亡者リストに、
 レオ・アウグスト・オレイニク公爵の名前
 は無いが、それもそのはず・・

 彼は、既にもう二十年以上・・
 行方不明なのである・・


 そう、先代のアルトゥール・オレイニクは
 七十を超えた高齢で、生きていれば、
 レオ・アウグスト・オレイニクの年齢は、
 四十半ばなのである。


「レオ・アウグスト・オレイニクを名乗る
 十四歳の少年に、逮捕令状をとれ!」


 オレイニク家でこれだけの不審死に関わる
 あの少年は、勿論エット-レ卿の殺人にも
 関与しているだろう。

 彼が関与しているのか、
 もしくは死んだ執事か・・
 その両者だったか・・


「留置場での死亡者は詳しくわかるか?」

「いえ、ほぼ黒こげの状態で、
 身元の確認は・・不可能かと」


 部下がラウル刑事に答える。
 ラウル刑事の脳裏に、
 セバスチャンの漆黒の燕尾服姿が浮かぶ。


 ・・彼が死んだ・・

 
 何か、胸につかえるような気分を、
 ラウル刑事はずっと感じていた。
 しばらく考え込んだ末に、ラウル刑事は
 部下に命じた。


「燃え残った中に、
 銀の懐中時計があったかどうか調べろ!」