永遠に失われしもの 第11章
・・呼べ・・呼べ・・・
頭の中で声がする・・
ここは何処だ??・・
手足が・・痛い・・
シエルの意識は混迷し、
その瞳は虚ろで、口を半開きにしたまま、
時折叫んだり、喘いだりしながら、
身をよじっている。
部下にシエルの監視を任せたウィルは、
派遣課のグレルの机の脇に立ち、
報告書に目を通していた。
「どう?・・・どう?」
グレルが顔をウィルに近づける度に、
グレルの赤い眼鏡の端についている
グラスチェーンが音を立てる。
「まぁ・・貴方にしては、
よくまとまっています」
グレルは、喜びながら跳ねている。
「でも今更どうして、
こんなこと調べさせたわけ?」
「我々が回収し損ねている魂は、
今までに十。
第一が
先代アルトゥール・オレイニク公爵。
場所がポーランドのリーシェンにある
彼の居城以降不明。
第二・第三が、
オレイニク公爵家執事と下男
同場所以降不明。
第四~第八が、
オレイニク別荘の管理をしていた
使用人一家計4名。
イタリア・マントヴァ郊外のオレイニク家
所有の別荘近くの使用人用住居以降不明。
第九は、私とロナルドが観察中だった、
オレイニク公爵家第二後継者
カール・オレイニクで、
先代の弟にあたりますね。
ミラノのホテル以降不明。
第十が貴方が観察中だった
ジョゼフ・キンスキ。
ヴェローナ郊外の彼の家以降不明。
最後のジョゼフとやらのみ、
オレイニク家との関係はまだ不明ですが、
何かしらの繋がりがあるとみて、
間違いないでしょう」
「やみくもに・・ってわけじゃなさそうね」
「アレがいかがわしい何かの計略の上で
魂を掠め取っているのは、
明らかでしょう。
これらのことを考え合わせると
貴方には引き続き、オレイニク家の監視、
魂の収支について
調べてもらわなければなりませんね。」
「面倒くさいわねぇ・・」
作品名:永遠に失われしもの 第11章 作家名:くろ