二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

こらぼでほすと 漢方薬1

INDEX|1ページ/9ページ|

次のページ
 
寺の坊主が女房の心配をしているより先に、沙・猪家夫夫は用意を開始していた。というのも、神仙界のクスリなので、化学療法とは相容れないからだ。まず、主治医のドクターに話を通して、しばらく、漢方治療をするので処方している薬を止めてしまうところから始めた。それから、その間に使う補助的な薬も、漢方薬で揃えた。
 人間じゃないというところまでは知られていないが、まあ、何かしら普通ではないことは理解してくれているので、漢方治療が終ったら、一度、精密検査をして、処方を変えるかどうかは診断するということで、主治医には認めてもらった。
 次に、寺の坊主に、しばらく別荘へ女房を拉致する話をする。なんせ、飲ませるだけで、一日仕事、その後、高熱で、二日ほどは意識不明になるなんてことになると、寺でできる治療ではない。
「は? 飲ませたら終わりじゃないのか? 」
 寺へ顔を出して、本堂で、その話を切り出す。先に坊主に話を通しておかないと、絶対に、坊主は許可しないからだ。
「そんな簡単なはずがないでしょう。人外のものが飲むなら、飲むだけですけど、ニールは普通のコーディネートもしていない人間なんですよ? 三蔵なら、僕だって飲ませて放置しますが、ニールは無理です。」
 何気に酷いことをのたまっているのだが、八戒は涼しい顔だ。事実、三蔵も普通のコーディネートもされていない人間ではあるのだが、元の作りからして違うし、限りなく人外に近い男だ。たぶん、飲んでも多少、熱を出すぐらいで済むだろう。
「どれぐらいかかるんだ? 」
「ざっと見繕って二週間てとこです。治療自体は、五日ぐらいで終るんですが、そこから化学療法に戻しますから、それぐらいはかかります。」
 西洋医学で使う薬は、直接、体内の患部に作用するものだから、東洋医学の治療とは、効果がまったく違う。だから、併用は出来ない。漢方薬というのは、直接ではなく、間接的に患部へ効果をもたらすものだから、化学療法のクスリと併用すると、効果が現れない。そこいらの調整が難しい。元々、ニールは、負のGN粒子を浴びていて、それによる細胞障害を引き起こしている。それを遅らせるクスリを毎日、服用しているから、その効果もなくさないとならない。今日から三日、クスリの服用を止めさせて、四日目に別荘に拉致して、例のクスリを服用させる。それも、朝に二粒、昼に三粒、夜に五粒というふうに量を増やしていく。
「金蝉の用意したのは、かなり強い薬ならしいぜ? 三蔵。まあ、その代わり、効くことは確かだ。半年は、細胞異常を拡大させないんだからな。半年毎に服用させれば、それ以上に悪化しないんだぜ? すごくないか? 」
 悟浄も、メールに添付されていて取り扱い説明書を読んで、唸った。ただのクスリだと思っていたら、ものすごい代物だったからだ。本来、これは持ち出し禁止どころではないんじゃないか、というものだ。
「飲ませろって言っただけだぞ? あいつは。」
「まあ、飲ませるんだけどさ。ママニャンの体力じゃ、かなりしんどいんだよ。てか、あいつ、どんだけ、おまえに甘いんだ? 」
「俺が耄碌すんのは阻止するつもりらしい。それで効かなきゃ、俺とうちのに桃を食わせるとさ。」
「「桃?」」
 沙・猪家夫夫が、同時に叫ぶ。それは、不老不死の桃というものだ。もう、なんていうか、本山の上司様は、三蔵が可愛くて仕方がないらしい。女房が死んだら、三蔵が悲しむから、そういうことになったのだろうと推測される。ついでに、三蔵も人外に引き込む気も満々だ。予想はしていたが、本当に言うか、と、八戒と悟浄も呆れて笑うしかない。
「つまり、あなたも妖怪になれ、と、天蓬さんはおっしゃってるわけですね。」
「八戒、そこ、ちょっと違うんじゃないか? 桃食っても、妖怪に変化するとは限らんだろう。」
「ニールは、まあ仙人でしょうけど、三蔵はねー。あははははは。」
「ママニャンなら、清らかな仙人様って感じだよなあ。あははは。・・・まあ、どっちも罪は深いんだけどさ。」
 今更だが、まあ、どっちも、人外、人間いろいろと手にかけているわけで、清廉潔白なんてことはない。冥界の裁断をされたら、どっちもかなりの罪状があって、罰を受けることだろう。
「んなことは、わかってる。俺もあれも、同じ穴の狢だ。・・・・とりあえず、しゃんとさせろ。このままだと危なかっしくて仕方がねぇー。」
 本当に今更だ、と、三蔵は笑う。腹を決めて、どちらも殺しているのだ、それで、罰があることなんて、今更、怯えることでもない。むしろ、やってくれ、と、思っている。だから、それはいいのだ。ただ、待っている時間を、まともに過ごせるようにはしてもらいたいと、三蔵も思っている。
「わかりました。じゃあ、ニールにも話して、治療をします。」
 八戒と悟浄も、そんなことはわかっている。まともに死ねるわけがないのは、ふたりにしても同じだ。すでに、八戒は、一度、その罰を受けた身だ。
「ちょうど、キラたちもプラントに遠征してるし、この隙にやっちまえば、わからない。悟空以外にはシークレットってことで行くぞ、三蔵。」
 漢方薬治療というものだとは公言するが、クスリの出所については沈黙するはかない。そんなものがあるなら、と、誰もが考えるだろうからだ。だが、これは、基本、持ち出し禁止のものだから、他のものには使えない。それなら、出所は知られないほうがいい。



「漢方薬治療? 」
 買い物から帰って来た寺の女房に、話を切り出す。悟空は、悟浄が鍛錬に付き合うと境内に連れて出たので、三蔵と八戒だけが、居間にいる。
「三蔵の上司が、あなたのことを心配して、薬を用意してくれたんです。ただ、これが、かなり強力なので、飲むだけっていうものじゃないんですよ。」
「えーっと、また苦いとか、舌が痺れるとか、そういう? 」
 八戒の漢方薬には、ニールも世話になっているが、できれば飲まずに済ませたい素敵な味のものが多いので、顔を顰めた。
「丸薬ですから、そういうのではありません。ただし、高熱で二日ほど唸るような目には遭います。」
「げっっ。」
「その代わり、体内の細胞を活性化してくれますから、あまり疲れて熱を出したりすることはなくなりますよ? ニール。」
 気圧変化によるダウン自体は、どうにもならないが、疲れから来る発熱なんかは確実に減るだろうし、体力的にも持ち直すのは確定している。ここのところ、ちょっとしたことで発熱するので、ニール自身も気になっていたのだ。どうも、自分の身体はおかしいとは思っていた。ドクターに聞いても、回復が遅いのは、無理するからだ、とは説明されるが、納得は出来ないでいた。
「・・・それって、どのくらいかかるもんなんですか? 」
「別荘で十日ばかりは、大人しくしていただきます。」
「十日? 」
「その前に、今、飲んでいる薬を止めて三日で、そのクスリの効果もなくしてもらうので、ざっと計算して二週間ってとこです。」
「はあ。」
作品名:こらぼでほすと 漢方薬1 作家名:篠義