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こらぼでほすと 漢方薬1

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 ただ、毎日、苦い薬を飲むとか、そういうものてせはないらしい。だが、二週間ともなると、亭主が認めないんじゃないかな、と、ちらりと亭主の方へ視線を流したら、目が合った。
「治してこい。」
「・・え? 」
「おまえ、ここんとこ気弱になってるだろ? たぶん、それは、身体がしゃんとしてないのも原因だ。」
「あ・・・はい。でも・・・」
「でももくそもあるか。亭主が命じてんだから、速やかにやれっっ。帰ってきたら、こき使うから覚悟しとけ。」
 そう言われてしまうと、寺の女房も反論はできない。はい、と、頷くだけだ。
「こき使うっていうかですね、ニール。たぶん、秋になったら、三蔵の上司様ご一行が寺へ、三蔵の女房の顔を拝みに遠征してきますんで、そちらの世話をしてもらうことになると思います。かなり酷使されますから、ここらでメンテナンスしておくほうが得策なんですよ。」
 実際、三蔵の女房の品定めにやってくるのだから、かなり大変なことになる。それまでに、身体のほうを回復させておかないと、本気で桃を食わせられるなんてことになる。さすがに、それをやられたら、ニールにも、いろいろと説明することができてしまうから、できれば、それは阻止の方向だ。子猫たちが、無事に戻ってきてから、当人の意思も確認してからでないと、勝手に死ねない身体なんかにされたら、ニールの神経が壊れそうだ。
「三蔵さんの上司? ええっ、俺、ただの同居人ですよ? 八戒さん。」
「でも、悟空が 『俺のおかん』って説明してきちゃったし、この人も、認めてきたらしいですから、あちらは、そのつもりだと思います。」
 八戒だって、実情が同居人ということはわかっているが、だが、この夫婦らしい雰囲気は、どう見ても夫婦でしかないし、上司様ご一行も納得はするだろう。だいたい、三蔵が嫁呼ばわりしているのだ、もう、どう弁明しても、夫婦以外の関係とは訂正は難しい。
「あんた、なんてことを言ってきたんですかっっ。ちゃんと、同居人だと電話で訂正してください。」
「ああ? てめぇーは、俺の女房だろうがっっ。間違っちゃいねぇーだろ。」
「あんたの上司様に、そんな戯言を本気で言うなんて、どうかしてるでしょ? 内輪で言うぐらいは構いませんけど、そんな誤解は、あんたのためにもならないんですよ? 」
「俺は、戯言とは思ってねぇーぞ。」
「でも、俺もあんたも、ノンケで、そういうことは・・・」
「それも説明した。セックスはしてないと言ったら、笑ってたぞ。」
 爆弾発言に、ニールは顔色を青くする。そんなこと、上司に言うなんて、有り得ないと、常識派貧乏性の女房は卓袱台に顔を伏せる。
「いいんですよ、ニール。三蔵の上司たちも変人ですから、倫理感がどうとか、そういうのはリベラルですから。なんせ、上司様にも、僕らみたいな夫夫かいらっしゃいますんでね。」
 直接の上司は、そうではないが、直接ではないほうは、八戒たちよりも、ずーっと永く夫夫をやっている。だから、そんなことで、驚くようなのはいない。むしろ、ノンケの三蔵が嫁にするのは、どんな生き物なんだ? というところがポイントだったりする。
「諦めろ、おまえ、絶対に弄られるからな。それまでに体調を整えておかないと、辛いのはおまえだぞ。」
 もちろん、三蔵も弄られる覚悟はしている。なんせ、上司様たちだ。三蔵や悟空を構いたくて仕方がないのだ。それに、新しい弄られ役が出来たのだ。そりゃもう、盛大に構われるに違いない。
「俺、里へ帰ってもいいですか? 」
「無駄だ。あいつらは、おまえの里だろうが、娘の家だろうが、どこへでも遠征する。」
 つまり、トダカのところでも、歌姫様のところへでも、押しかけてくるということだ。どこにも逃げ場がないらしい。
「悪い方たちじゃないんですよ? たぶん、はしゃぎすぎるとか、そういうことで。」
 別に、障子の桟が汚れているとか、味噌汁の味が濃いとか、そういう陰湿なイジメをするようなことはない。ただ、「なんで、エッチしないの? 三蔵のテクがないから? 」 とか、「裸エプロンしてあげないの? 」 とか、一部の上司様がおっしゃるぐらいのことだ。残り二人は、そういうこともしない。むしろ、「よく、こんな乱暴者に嫁いでくれたな。」 とか、「あれの相手は大変だろうが、広い心で付き合ってやってくれ。」 とか、おっしゃるだろう。過去のいろいろを知っているので、三蔵が嫁を貰ったのが、驚愕の事実だったのだ。
「・・・・三蔵さん、俺、あんまり良い女房じゃないから叱られませんか?」
「俺には、できた女房だ。心配するな。」
「・・・すいません・・・」
「バカッッ、うぜぇーこと言うな。いいから、治療してもらえ。いいな? 」
「・・はい・・・」
「冬前には、黒ちびも戻るぞ。」
「はい。」
「紫子猫と桃色子猫は、さんざん遊んでやったんだから、ちびにも同じようにしてやれ。」
「そうですね。どこか、いいところを探さないと。」
 話が一段落したので、八戒が口を挟む。これで、夫婦じゃないなんて言ったら、そっちのほうがおかしいだろう、とは、内心でツッコミはする。
「じゃあ、四日後に迎えに来ますから、それまで、クスリは一切、飲まないでくださいね、ニール。」
 クスリの効果を消すためには、これしかない。ただ、そうなると、ニールは不眠になる怖れがある。それも、ちゃんと、八戒は用意してきた。漢方薬の催眠導入剤というものは存在するのだ。
「寝る前に、湯のみ一杯ぐらい飲んでください。それで寝られます。お酒を呑んだら、半分くらいに量を調整してください。これは苦くありませんから。」
 ペットボトルに入った黒い液体を卓袱台に置く。寺の女房は、うわぁーという顔をしているが、素直に頷く。このグダグダした身体が少しでも楽になるなら、それは、寺の女房にしても有り難いことだ。ただ、亭主の上司様たちには、戦々恐々ではある。



 四日目の朝に、沙・猪家夫夫が来訪し、小さな丸薬を二粒、寺の女房に飲ませた。丸薬なので、呑み込んでしまえば苦いも辛いもない。
「さて、悟空、しばらく、ママと会えませんから、外食でもしましょうか? 」
 慌てて、別荘に移動する必要はないので、八戒は、悟空に、そう言ってお出かけの準備をさせる。で、何気に坊主をスルーしているのだが、それには、寺の女房のほうが声をかける。

「一緒に行きませんか? 三蔵さん。」

「面倒だから、近くのファミレスぐらいだぞ? 」

「まあ、そう言うな、三蔵。たまには、サルにバイキングでも食わせてやろうぜ。あれなら、奢っても心臓が痛くならないからな。」

「じゃあ、お前の奢りだ。」

「へーへー奢ってやるよ。しばらく、ママがいなくて寂しいだろーからな。」

 余計な一言で、悟浄はハリセンでシバかれているが、誰もがスルーだ。ちょいと遠征して、肉でも魚でもなんでもありのバイキングの店で食事した。明らかに、悟空以外は元が取れないだろうが、いいのだ、それを補って余りあるほど、サルは食う。だから、店側としては、トントンになるだろう。そこで、丸薬を三粒、また八戒は、ニールに飲ませた。




作品名:こらぼでほすと 漢方薬1 作家名:篠義