短編ログ(阿国と高杉・白夜叉と高杉)
「さぁな…いつだろうな。あの紅桜って刀を相手にしたときは半分は確かに俺だったぜ。多分な…けど、銀時の意識の方が強かった。どんなに奇麗事言ったって所詮はあいつもただの人殺しだ。刀振るうたびに悦んでやがった」
くく、と喉を震わせると細い項に唇を寄せて緩く歯をたてた。
「なあ…食い千切ってやろうか、高杉」
「……」
「どれほどてめーが銀時を思っても銀時はてめーのモンにゃならねェしてめーの願いを叶えてもくれねぇよ」
けど俺は違う。
そう声を潜めると半ば勃ちあがりかけたものの先端に爪をたてる。痺れが走ったように痙攣した高杉を見下ろして薄く哂った。
「死ね…っ」
屈辱だった。
「…っく」
「あーいいね、その顔。俺、高杉のそういう顔すげぇ好き」
「…の、下種やろう…」
腰に差さったままの愛刀に手をかけて迷わず抜きかけた。抜きかけたがそれは僅かに抜き身を晒しただけに止まり高杉はびくりと身体を震わせて思わず目の前の肩に縋りついた。
「あらあら、どうしたよ。抜かねぇの?」
「…っ」
「まあ高杉が俺に勝てるわけねぇけど」
体内を穿つ長い指に息がつまる。壁に押し付けられた背中も押し広げられた両脚もどこもかしこも痛みに悲鳴をあげていた。それでも頑なに奥歯を噛み締める高杉が心底愛しいと思う。
「思い出すよな。あの時はどんだけ人を斬っても天人ぶっ殺しても罪にゃならなかったんだぜ?それが廃刀令だか何だか知らねぇけど刀取り上げて人は殺しちゃいけませんだと。哂っちまうぜ。…どっちにしても俺らみたいなのにゃ生き難くて仕方ないよなあ」
無造作なようで的確に高杉の性感帯を弄る指に呼吸を乱され、それでも高杉は声をあげなかった。
銀時が戦場に背中を向けたあのとき…高杉は確かに護られた筈だった。あの祭りの夜近づいたのは高杉だが、それは銀時が銀時だったからだ。甘いものに目がないところも軽口と雑言を叩きながらも愛しそうに子ども二人とじゃれているところも銀時そのものだった。高杉が焦がれて焦がれて仕方なかった銀時がそこにいたからだ。
「俺にしとけよ、高杉」
そうしたらお前が望むもの全部やるよ。
あの歪な戦が銀時の人格をゆがめてもう一人の銀時である夜叉をつくりだした。それでもあの時代、自分たちが生きていくために白夜叉は必要不可欠だった。彼の残忍さを利用していたのも事実でまさに時代の寵児だった。
「俺は銀時の願望の塊だ。銀時がしたくても理性なんて下らねェもんで雁字搦めにしてるものそのものだ。良かったなあ、高杉。俺が人だろうが天人だろうがぶっ殺してたのも高杉のこと無茶苦茶に犯してやりてぇのも全部あいつの願望なんだよ」
「……」
ゾッとした。
目が常にもまして尋常ではない。
「大好き、高杉」
まるで幼いあの頃のように銀時は笑う。
(ああ…そうだ)
唇に唇を押し付けられ、高杉はとうとう瞼を閉じた。
これは銀時の復讐だ。
元は優しい男だった。
生きるために刀を振るってはいたが戦争を好んでしていたわけではないことは高杉が一番よく知っている。
それでもいつか…高杉にほんの僅かに吐いた弱音も高杉は気づいていながら見て見ぬふりをした。
勝つためだ。
勝つためにはお前の力が必要だからと追い詰めて追い詰めて…やがて人を喰らう鬼を生み出してしまった。
(俺のせい…か)
銀時の肌を抉っていた指から力が抜け、滑り落ちるその手を白い夜叉がとった。自分の血に汚れている指先を口に含んで執拗に嬲られる。
ほんの数メートル先では飲み屋帰りの男たちが鼻歌を歌いながら通り過ぎる。キラキラと光るネオンも一本通りを隔てたここまでは届かない。それでもいつ誰が来るかも知れないこんな路地裏で白い夜叉に犯される。
どれほど甘美な痛みだろう。
伸ばした手
柔らかな銀色の髪に絡めると白夜叉は小さく微笑んだ。
作品名:短編ログ(阿国と高杉・白夜叉と高杉) 作家名:ひわ子