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インソムニア

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 シュウの猫に会うのは、これが初めてではない。部屋で何度か見たことがあるが、訪れる時はだいたい戦の話が多いので、触れ合うようなことはしてこなかった。
 だから唐突に渡されて、しかもあのシュウ自ら可愛がっていると言われて、正直クラウスは動揺した。部屋に連れていこうにも、猫の抱き方ひとつわからないのだ。慎重にシュウに手渡しされたままの状態で歩く。けれども猫の方は別段警戒することもなく、部屋まで大人しく抱き上げられたままだった。

 クラウスが自らのベッドの上に降ろしてやると、猫は寝床を確かめるように二三回、前足で突く。そして満足したように一度鳴くと、ごろりと寝転び毛繕いし始めた。クラウスはあまりの人懐っこいしぐさに思わず笑った。
「君は人が寝ないと寝ないんだって?」
 そうなんだ、と言わんばかりに猫は眠そうな返事をしてくる。
「じゃあ、そろそろ寝ようか。君を寝かさなかったら、怒られてしまうからね」
 話しかけながら、部屋を出た時からつけっぱなしだったランプを消してベッドに入る。乱雑に置いてあった掛け布団にくるまると、すき間から猫が入ってくる。丁度腹の位置に収まると、静かになった。そっと触れると、ごろごろと喉を鳴らす音と、はたはたとゆるやかに尻尾が当たる感触が届く。腹の所がじんわり温かい。ゆるゆると下がってきたまぶたの裏で、これが生き物の温かさなのか、と、クラウスは思った。

作品名:インソムニア 作家名:深川千華