Alf Laylar wa Laylah
幼いその子は、狼のジンの何番目かの仮の主った。前の主と気の強い女医との間に生まれた子で、今はクセルクセス遺跡を目指して目下冒険の途中である。
「わたしねえ、楽しみなの、だって、おじさんともイフリートとも初めて会えるんだもん!」
はしゃいだ声に、狼はひとこと訂正を入れた。
「イフリートは廃業したっていってたぞ、だからふたりともただの人間のはずだ」
「でも、魔法使いだもん」
「そりゃ違いない」
狼は鷹揚に頷いた。いずれにせよ、彼にしても主と会うのは久しぶりだ、楽しみなことに違いはなかった。
「じゃあ、飛ばすか。しっかりつかまってろよ」
うん、という元気のよい声にジャンは笑った。この子はどこか、伯父である人物が子供だった頃に似ている気がした。
作品名:Alf Laylar wa Laylah 作家名:スサ