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お掃除ギルベルトさん。菊編

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 あなたのお部屋をきれいにお掃除してくれるのは、かわいいうさ耳メイドさん!

 うさ耳メイドがあなたのお部屋にお伺いし、お部屋をお掃除いたします。当店のメイドたちは、お客様に家事代行や家事手伝いを通して快適な生活環境を提供することを使命としています。
掃除や家事代行の研修を受けた本物のメイドたちが、時間に追われるあなたの生活に、家政婦メイドとしてのホスピタリティーを発揮して献身的な家事代行業務を遂行することをお約束します。初回に限り、九十分無料!是非、この機会にご利用ください。




 修羅場っていたお陰で郵便物も確認する暇もなかった本田だが無事に入稿も済み、漸く心に余裕が生まれ、溜まりにたまった郵便物を仕分けているとひらりとちらしが足元を滑った。

「…お掃除ですか」

部屋を見渡せば、使った食器がそのまま、紙くずは溢れ、脱ぎ散らかした服や資料が散乱し、えらいこっちゃになっている。この惨状をどうにかしないといけないのだが、まったくやる気がしない。本田はぼーっとそのちらしを眺める。そして、気がつくと電話を掛けていた。




 一時間後、指定した時間に玄関のチャイムが鳴り、本田は涎の水溜りが出来た卓袱台からばっと顔を上げた。
「ど、どうしましょう!本当に来てしまいました!!」
ほんの少し惰眠を貪って、正常に戻った脳が警鐘を鳴らす。こんな部屋を可愛いうさ耳美少女に見られるとか!…あまつさえ、エロ原稿の資料のアレなDVDとかアダルトグッズを見られるって、どんなM行為だよ、うはwwwwwテラワロスwwwww…って、草、生やしてる場合じゃないでしょう!私!!
「…来て頂いて悪いのですが、帰っていただきましょう」
そうしようと本田は我に返った頭でそう決定すると、玄関へと向かい、引き戸を開いた。

「こちらから呼びつけておいて申し訳ないのですが、お掃除は……ウホ!」

「(…ウホ?)初めまして、ゴシュジンサマ!呼ばれて、掃除に来てやったぜ!!」
本田は思わず口元を押さえる。
(何、何なの、このメイド!!)
銀髪赤目にふさりふわふわした白く長いうさ耳をピンと立てて、自分よりも二十センチは高い細マッチョな青年がフリフリのピンク色のメイド服に身を包み、掃除道具一式を詰め込んだバケツを片手に立っていた。
(銀髪赤目って、何なんですか!うどんげ!!…し、か、も、異人さん、しかも、美形!うさ耳女装細マッチョって、くあ!何て、ストライク!!新刊のネタにしてやりたいくらいですよ!!)
本田のテンションは修羅場三日目に突入したときの如く、ハイになった。
「ゴシュジンサマ?おーい、大丈夫か?」
物も言わず、自分をガン見する客に不安になったのか困惑した顔で、メイドがひらひらと本田の目の前で手を振る。それに、本田はハッと我に返った。
「すいません。取り乱しました」
「そっか。急に反応しなくなるから、びっくりしたぜ。俺はギルベルトだ。…で、どこ掃除すればいいんだ?」
我に返った本田ににこりとメイド、ギルベルトが笑う。黙ってればイケメン、笑えば子どもの如く可愛いメイドにコロリと本田は落ちた。
(期待していた美少女、ではありませんでしたが、細マッチョならば美味しく頂けます。これはこれで萌です!掃除、してもらいましょう!)
「どうぞ、本当に散らかってますが、上がってください」
「おう!」
そして、早速、うさ耳メイドギルベルトさんによるお掃除が始まった。





「おー、これは片付け甲斐があるぜ」

ギルベルトは早速、床に放置されていたカピカピになった食器を流しに運び、散らかった服を回収すると、本田を振り返った。
「ゴシュジンサマ、洗濯機どこだ?」
「こちらです」
案内すると、ネットに入れるものとそうでないものを手早く仕分け、洗剤と柔軟剤を投下し、部屋に戻ると足元に落ちたものをてきぱきと拾って…、ギルベルトは固まった。
「…ぁ」
「どうしました?」
「これ、どこに片付ければいいんだ?」
ギルベルトがてにしていたものは男性器を象ったスイッチをいれると卑猥に動くシロモノ。それは勿論、自分用ではなく漫画の中で嫁に突っ込んであんあん言わせてるために買ったもので、未使用である。
「そこの資料って書いてある箱にその手のものは突っ込んで置いて下さい」
「…うん。解った」
性的なものが恥ずかしいのか何なのか、ギルベルトの白い頬はかあっと赤く染まっている。それをニヨニヨと本田は眺める。
(これは、いい目の保養wwww次の漫画のネタにしましょうwwww)
視姦されているとは気付かず、ギルベルトは玩具を片付け終えると次は散らばった雑誌を片付けるべく、本を拾い上げた。
「…っ!!」
悲鳴を上げるのを堪え、ギルベルトは思わず落としそうになって、慌てて持ち直す。
(何だよ!!これは!!!)
幼女が素っ裸で何だか訳の解らない生物の触手にもにゃむにゃされている…な表紙だった。
(…何か、ここのゴシュジンサマ、三丁目のムキムキとイイ勝負してんなぁ…)
あっちは大量のSMグッズとアダルトグッズに身の危険を感じたりもしたが、こっちのゴシュジンサマの好みは自分ではないだろう。つるんぺたんの可愛い系がお好みのようだ。
「どうかしましたか?」
「…イエ、ナンデモアリマセン。…この薄いドージンじゃない……、アニメみたいな本はどこに直せばいいですか?」
遠い目をして、我に返りギルベルトはぎこちなくもにこりと笑う。それに本田も笑みを返した。
「そこの本棚にお願いします」
普通のエロ本よりも過激な表紙を見ないようにしながら、ギルベルトは薄い本を指示された場所に片付け、DVD本体とパッケージがバラバラになったエロアニメDVDを、半ば悟った顔で片付け終え、終わった洗濯物を干して、紙くずを拾い可燃物のゴミ袋に放り込み茶碗を洗う。
(…何か、とんでもねぇとこに来ちまったぜ…。…ってか、エリザと同じ趣味な奴かよ…)
幼馴染みは男同士のアレやコレやを描いてはきゃっきゃウフフしてる俗に言う腐女子だ。趣味が高じて、漫画まで描き始めた。同人誌とか言うやつらしい。原稿を無理矢理手伝わされることもあり、癖々しているのだが、このゴシュジンサマもそうらしい。…人の良さそうな顔をしているが、そう言う人間に限って性癖はアレだったりするのだ。自分に害が及ばない限りは見ても見ぬフリをしなさいと雇い主からは口酸っぱく言われているし、藪を突いて蛇を出したくはない。
(俺なんか見ても、モエとかねぇだろうに。野郎の脚見て何が楽しいんだか…)
ギルベルトは本田の視線に気付きつつも、茶碗を洗うことに没頭する。
(…それにしても、きれいな人ですね。言葉遣いがメイドらしくはありませんが、雑な口調でも「御主人様」呼びはかなり萌です。それにしても、このミニスカ、パンツ見えそう。…ってか、いい脚してますよねぇ…。かなり目の保養です)
女性の脚の方が好きだが、無駄なく引き締まった長い脚を白いガーター付きオーバーニーが包んでいるのは倒錯的でゾクゾクする。視線を上げれば、丁度尻の付近のスカートが持ち上がって膨らんでいる。何だろうと思わず本田は凝視する。それは時々、もぞもぞと動く。
(何でしょう?気になります…)