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体、心

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 徐々に動く熱が、骨盤よりも敏感な腰まで動いて、じっとしていられない。それを訴えようとしたら、もう片方の手が腹に回って、体を引き寄せられた。ぴたりと触れ合わさった背中全体が、臨也さんの温度をとらえる。
「い、いざやさ、くすぐったい…、」
「ねー帝人くん、この後さぁ、ちょっとエッチなことしたくない?」
 言葉で訴えて、解放してもらおうと思ったら、臨也さんから予想外の返事がきた。
「え、なに、なんですか急に、」
「んー、急っていうかねー、んー、」
 いわゆるお誘い、というものなのだろうか、それにしては夜にベッドで、という自然な流れでもない上、気分がお互いに高揚している雰囲気でもない。そもそも臨也さんから、いつもなら感じる性急さがまるでない。心地いい空気ではあるけど、甘ったるい雰囲気でもないのに誘われている。ちぐはぐなそれに、奇妙な気分になってくる。
「あ、うん、ムラムラって言葉がしっくりくるかも。」
「へ、」
 ムラムラという言葉が、臨也さんに似合わなくて、かわいいなと思った。
「帝人くん、腰、危なっかしくてムラムラしてきちゃった。」
 かわいいな、と思った臨也さんの、理由は納得できなくて、尋ね返そうとした途端、臨也さんの手が先程の様子とがらりと変わった。言い換えれば、性的な動きに変わっていて、服の下に入った臨也さんの熱が、直接へその周りを撫でて、腰から上へ。
 くすぐったいという感覚は、いまだにある。けれど、手つきがいやらしい大人のそれで、そういう雰囲気でも気分でもないのに、体が反応してしまう。手の動き以外は、あまりにいつも通りで、それに余計混乱して、肌が粟立った。
「っい、いざ、」
「腰、大事だもんね、ベッド、行こうか…帝人くん。」
「っ、」
 今度は声さえも、艶のあるそれで、耳元で囁かれたその言葉で、全身が熱を持ち始める。ぞわっと背筋から抜けていく、痺れる毒のような声は、甘いとかそんな柔なものではなく、正真正銘人間に対する毒みたいな声だ。耳に当てられた唇の感触と声、脇にある手の熱だけで、足に力を入れられない。混乱している中で臨也さんの声に、僕は飲み込まれてしまうんじゃないかと怖くなった。
 すでに体はぼくの意志をきいてはくれず、臨也さんにされるがまま、僕は横抱きにされてベッドにふわりと寝かされた。

「…コーヒー、」
 横になる瞬間、ふわりと香ったコーヒーを思い出し、せっかく淹れたのに、と思い声がでる。あまりに雰囲気に合わない正直な呟きの後、臨也さんが、ふ、と恐ろしいほどの美しさで笑った。僕はその顔にとても弱い。
「ごめんね、終わったら俺が淹れなおすよ。」
 言われながら、臨也さんが触れてくる。熱い。
 その時、よくはわからないが、全身から本当に力が抜けてしまって、僕は諦めた。瞬間湯沸かし器より、水がお湯に変わっていく瞬間の方が怖い。沸点に届くまでに時間と猶予がある水は、ぬるま湯から熱湯、沸騰に変わるまで、ずっと熱を持っているのだ。冷めにくい熱。
 臨也さんのあの顔は、ひたすらに僕をどう解かすかと語っていて身震いする。
「ほら、多分帝人くんしばらく立てないだろうから。」
「お手柔らかに、」
 どろどろにずっと熱にかけられる自分があわれで怖くて、息を吐くような声しか出ない。僕は今、この人の下がりそうもなく、徐々に上がっていくだろう熱がどこまでいくのか計り知れなくて恐ろしい。未知の熱に、愛されている幸福と恐怖が混ざり合って堪らなかった。
「多分今日は腰が砕けた後も、一生懸命君のこと愛しちゃうから、ごめんね、帝人くんの体には申し訳ないんだけど、覚悟してね。」
 目元にキスをされながら考える。体力が違うのだから配慮してほしいが、この人自身が自分をコントロールできない熱を、僕がどんなに止めても無理だと思う。この人がどこまで、僕を解かしてしまうのか、それが怖い。この人の熱に、何度経験しても慣れない。

 気持ちは、貴方にも負けないくらい、僕も熱を持っているのに。
「…気持ちと一緒で、僕の体も臨也さんの体を受け止めきれたらいいのに、」
 これは、僕の、本音。

 言った直後、臨也さんの温度がふつりと上がったのを感じて、近付く熱い瞳が愛しくて怖くて、目を閉じた。
 咬みつかれるような口づけの、舌はやはり狂うほど熱かった。
作品名:体、心 作家名:青海斎