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永遠に失われしもの 第14章

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「ダーリン、見っけ~~~」
 
 
 グレルは、腰まで届く赤い髪を振り乱し、
 ベランダから室内に駆け寄ろうとするが、
 トランクに蹴躓いてしまった。


「イッタ~~~イッ!
 何でここに、こんな物、置いとくのよっ」

 とぶつぶつ言いながらも、
 棺に入ろうとする葬儀屋の胸に抱きつく。


「ゥフフ・・
 ローマ中のホテル探しちゃったッ。

 やっぱり・・泊めてくれない~?
 もう~ウィルが徹夜で・・」

「グレルさん!」
 


 セバスチャンは、シエルのベッドの脇で、
 驚いた顔をして立っている。



「えええ~セバスちゃん??

 ということは、そこに寝てるのは・・
 あのガキ??」

「いい所で出会いましたね--」


 と顔一杯に微笑を浮かべながらも、残忍な
 気配を漂わせ、指をバキッと鳴らせつつ、
 セバスチャンが歩み寄る。


「や・・やめ・・やめて、顔は・・」

「嫌です」


 さらに笑顔を増して、指を鳴らしながら
 グレルに近づくセバスチャン。


「ひ~~~」



 グレルを殴ろうと
 セバスチャンの腕が伸びた瞬間、
 グレルとセバスチャンの間に、
 葬儀屋の棺の蓋が音を立てて、倒れた。



「ヒヒ、ごめんよぉ...邪魔しないように
 必至に支えていたんだけど、
 コレ重くてねぇ...」



 と言いながら、巧妙に、
 葬儀屋は、グレルとセバスチャンの
 中間の位置に立った。

 セバスチャンは顎に指を当てて、
 興味深そうな目で、言った。



「ほぉ、そういうご関係でしたか--」

「ええ??セバスちゃん、誤解しないでね。
 アタシはいつだって、アナタのモノ・・

 でも恋多き女の宿命ってヤツかしら・・」

「ほざいててください」



 セバスチャンが繰り出す拳から、グレルは
 楽しいねぇ~とへらへら笑う葬儀屋を
 盾にして、逃げ回っている。



「はぁ・・はぁ・・もう安心してよ・・
 セバスちゃん!・・アタシ達、もう
 狩らないから・・」


「どういう事です?」



 動きを止め、首を傾げて、
 セバスチャンがグレルに問う。



「排除命令撤回になったのョ・・
 その代わりに・・
 監視命令になったってワケ。

 理由はアタシには聞かないでね・・
 アタシにだってわかんないんだから。

 それで探してたのよ、ずっと。
 もう徹夜でやれって、
 あのウィルに言われてさ~・・

 でももう限界で、ここに来たら、
 アナタが居たっていうわけ・・

 最初から、ここに来ればよかったわ~」


「そうでしたか--
 ではその分は割り引いて差し上げます。
 
 ただ、
 ぼっちゃんを勝手に連れ去ったお礼と、
 余計な薬を打っていただいたお礼は
 まだですので--」

 
 また口角を上げ、
 嗜虐的な微笑を浮かべて、
 指を鳴らし始めるセバスチャンに、
 飄々と葬儀屋が話しかける。


「執事君...この彼は、大変面白い情報を
 君にくれると思うよ~~...

 今日のサンカリストの地下墓地被害者の
 シネマティックレコードに関する..ね」