宵闇にて
七:かごめかごめ
「閉込められるというのはどんな気分なのだろう」
お前分かるかい、と若は澄んだ眼で首を傾げた。
「嫌なものだと聞くけれど」
「……普通は、そうでしょうね」
「例外を知ってるかのような口振りだね」
知っているもなにも、この人こそが『それ』だろう。城の堅牢さを誇ることが悪いとまでは言わないが、城は所詮城に過ぎないのだ。例えば援軍の来ない籠城は、緩やかな自害と変わりない。
けれど私はそれを彼に指摘する事はない。彼の為を思うなら諫めるべきだということは百も承知だが、ことこれに関しては彼は聞き入れなどしないだろうし――何より。
飛べない小鳥は美しい。
彼のことが心配になる反面、彼にはずっとこのままでいて欲しいとも思う。いつか彼が家督を継ぎ、他国と戦になった時、そんな大将では勝利など夢のようなものだけれど。これも遠回しな自害なのだろうか。そうなのだろう。
それでも良い。
真綿の締まる感覚は、思ったよりも甘美だった。
彼は笑う。
「お前は閉込められたことはある?」
「…………いえ」
「そう」
着物の袷から、彼の温かい手が潜り込んで来た。
私は抵抗せず、彼のするままに任せる。こうする時の彼は酷く幸せそうな顔をするからだ。
「じゃあ、私と一緒に閉じこもってみないか」
「 」
出来得る限り押さえた声で私が答えると、彼は笑みを深めてその腕の中に私を収めた。
(北条主従)