こらぼでほすと せっちゃんはぴば
ハイネに、そう言われ、キラと悟空に腕を掴まれると、もう行き先の変更は効かない。
楽しんでおいで、と、ニールは手を振っている。もう、その頃は、ニールも長時間の外出
ができなくなっていた。だから、強引にはできなかった。
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・・・・・・・あれも、そうだったんだなあ。・・・・・・
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後からレイに聞かされて納得はした。俺の過ぎてしまった誕生日のプレゼントの代わり
に、みんなでそういう企画をしたのだ。たまには、年少組総出で遊ぼうということだった
。だから、それに見合う衣装の調達を、ニールがしてくれた。プレゼントと言われたら受
け取らないから、デートと言ったのだ。
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自分の誕生日なんてものに興味がないから、いつも忘れてしまっている。だが、絶対に
忘れずに何かしてくれるのが、ニールだ。今年も、朝から何やら作っている最中だ。あの
時は、ちょっとムカっときたのだが、今は、それも懐かしい思い出だ。
「刹那、何か欲しいものはないか? 」
誕生日の前後には、必ず、ニールはそう言って尋ねてくれる。相変わらず、俺には欲し
いものなんてないのだが、今は、ひとつだけは貰うことにしている。
「あんたの作るケーキと料理。」
「・・・・ほんと、物欲がなさすぎるなあー。もうちょっと高価なものを考えてくれよ。
」
「高い材料で作るケーキと料理。」
「わかったよ。」
「あんただって、俺にプレゼントさせてくれないだろ? お相子だ。」
「俺は、おまえとデートって、いつもリクエスト出してるぞ? 」
「買い物して食事するだけだ。その買い物も、俺のばかりで、あんたのじゃない。不公平
だ。」
「俺のなんか必要じゃないんだって、いつも言ってるだろ? 」
「あんたの嘘は聞き飽きた。」
「嘘って・・・」
「それなら、今年は付け足す。あんたに服を贈る権利を、俺にプレゼントしろ。明日、買
いに行く。」
「そんな大袈裟な。」
「これは決定だ。今日のケーキはなんだ? 」
「今年は、ババロアとフルーツの盛り合わせにしたよ。おまえさん、好きだったろ?」
好きだと言ったものは、必ず忘れないで用意してくれる。こうやって、誰かに誕生日を
祝ってもらえるのは、とても幸せなことだ。一人で生きていたら、誰にも言ってもらえな
いし気付かれない。誰か一人でも、それを知っている人がいれば、生まれた日を祝ってく
れる。本当に些細なことだが、それだけで人は幸せだと思える単純な生き物でもある。そ
れは言葉だけで十分に幸せだ。
今は、それを知っているから。
それをくれたのは、この親猫だ。とても感謝している。何もなかったはずの俺に、見えな
い温かいものを、たくさん与えてくれた。それを貰ったから、俺は幸せだと感じることが
できるのだ。
いつまでも、お互いの誕生日に言葉を贈りたいと願っている。
作品名:こらぼでほすと せっちゃんはぴば 作家名:篠義