都市伝説
ぷっすー。
「あはははは!顔真っ青ですよ?そんなにびっくりしました?」
「だっ・・て、菊・・・そな、の・・・」
「あらあら、震えてしまって可哀想に」
カタカタと震える自分に音を立てずに近寄って、菊が耳に口元を寄せる。
ふ、と息を吹き込まれるように言われた。
「私だって、怒るんですよ?」
す、と身を引いた菊の顔には滅多に見ない笑い方。してやったり、という顔。段々、ある一つの可能性が見えてくる。
「・・・・まさか」
「ふふ、冗談です」
けろりとした顔で言われ、へたりと座り込む。怒りなぞ沸かずにただただ安堵。好きな男に他人に売ると言われるのがこんなに響くとは思わなかった。・・・・ その好きな男に抱かれることさえ滅多にないのに。
「ギルベルト君?ホットケーキ焼いたり、飲み物を運ぶくらいなら私だって文句は言いませんけれど、奴隷か何かのように使われるのは、私だって嫌なんです」
「く、口で言えよ馬鹿ぁッ!!俺、今すげえ取り返しの付かないことしたって思って・・・」
「第一付き合い始めから点数つけてたら今はもうとっくにマイナスの3桁にはなってますよ」
「え・・・マジ?」
涙目でへたり込んだまま見上げると彼がふふ、と笑った。
「そういう可愛いところでマイナス点は殆ど帳消しですからご安心を」
さらりと頬を撫ぜられてようやく、涙腺が決壊した。